第51話六階層 死霊の住処

 おもてなし料理だが、無難でごく在り来たりだったな。

 ビクビク怯える半裸男だが、チャンスをやるか。


「おもてなしの腕を磨け。でないと強制異動だ」

「精進させて頂きます!」


 総出の敬礼は評価してやるか。


 右腕に出口まで案内させ、エレベーターに乗り込んだ。

 ふむ、正装がしっくり来るな。

 あ、裏事情を聞き忘れた。


「おい、五階層の裏事情はなんだったんだ」

「え? 滅茶苦茶堪能してたじゃないですか、溶岩プール」

「五階層連中しか需要がないな」

「ですね。へへ」


 へらへらとムカつく野郎だ。

 五階層は今後、温水プールに改装だな。

 無駄に広大だからな、いいスポットになるだろうな。

 色白と一緒に行くのもアリだな……。

 

「ふふ……ん? 煙……霧か? おい、右う……」

「み、みーんみーん」


 蝉の真似事だと? 

 何がしたいんだコイツは。

 ゆっくりと止まったエレベーターだが、右腕が動こうとしないぞ。


「ろ、六階層の死霊の住処になります……待ってるんで、勇者様一人で行って下さい。みーんみーん」

「貴様……怖いのか?」

「はい」

「来い!」

「イーヤーダー!」


 駄々を捏ねるクソガキの真似しやがって。

 心底腹立つ一方だ。

 両手足をロープで拘束しとけば、心置きなく連れていけるな。

 惨めったらしい姿もお似合いだ。


 道なりに進んでるが霧が濃くなって、視界が非常に見辛い。

 思い返せば、魔王城に乗り込んだ際も、ここは忌々しい霧だったな。

 

「……あの、勇者様」

「なんだ」

「早く七階層に行きましょうよ……」

「うっさい。貴様は黙っ……何か来るな」

「オワタ、キュー……」


 死んだフリとは情けない。

 前方から歩んでくる何かを見定めてやる。


 ほぅ……首無しの黒騎士か。

 確かデュラハンと言ったか?

 頭部を小脇に抱える意味が分からんぞ。


「俺はデュラハン。六階層の主だ」

「私は新たな魔王、こっちのゴミは元魔王だ」

「なに? 人間の女が新魔王だと? 何かの冗談か?」

「冗談だと思うか?」

「知らんがな」


 コイツめ……敬いもせず、タメ口で堂々としやがってるな。

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