女勇者、引退したい魔王に代って、魔王になる

第52話しつこいデュラハン

　首無し野郎め。　

　誰も頼んでないのに決めポーズしやがってる。

「俺は断罪者……見え透いた嘘を吐き続けるなら、断罪する」

「やってみろゴミ屑鎧」

「断罪執行！」

　煽り耐性の無い奴め。

　大層切れ味の鋭そうな黒大剣だが、私の身体に触れたら砕け散るぞ。

「きぇえええい！」

　ふっ。

　ガラス細工の如く、綺麗に砕け散ったな。

「……は？」

「断罪失敗か？」

「こ、このクソ女め……これは、ほんのお遊びだ！　今度はこの狂絶剣で断罪だ！」

　ほぅ、魔力を込めて威力を増幅させる魔剣か。

　だがそれがなんだ。

　何も学んでいないのか？

　脳天目掛けて振りかざした所で、根本からポッキリ折れたじゃないか。

「あ、あり得ん！」

「現実を見ろ」

「ぐぬぬ……さっきのはなまくらも同然だ！　この絶命人形を前に、何時まで威張ってられるだろうな！」

「あーだこーだ言ってないで、早く試せ」

「今度こそ死ね！」

　明らかに呪物の類だろうが、精霊王の加護で呪いは効かん。

　むしろ呪いをかけた呪物が浄化されるんだぞ。

　ほら見てみろ。

　ただの可愛らしい人形に戻ったぞ。

「……な、何故呪いが掛からん！」

「その人形を抱いて、枕でも濡らせ」

「あのー勇者様？　ワシ、先に次の階層行っててもいい？」

「許さん」

「えー」

　私としたことが盲点だった。

　代わりに右腕の奴を断罪させればいいじゃないか。

　今なら拘束済みでお得だ。

　さっさと渡すか。

　右腕をポイっと投げ渡したが、軽く叩き落とされて、受け取り拒否をしやがった。

「いでぇ……でゅ、デュラハン君？　や、優しく受け止めてくれないの？」

「女め……最終奥義で消し炭だ！」

「ワシの声届いてる？」

　右腕がやいのやいのと五月蠅いが、最終奥義は気になるな。

　真の実力を体験してやるか。

「来い、屑鉄」

「ブッチン！　死に腐れ！　最終奥義ダークネ」

「デュラさん！　もう止めて下さい！」

　骨の魔の者か？

　勝手に間に入るな、邪魔だ。

「骨美！　何故来たんだ！」

「デュラさんが自分を忘れてしまっていたからです！」

「ほ、骨美……」

「デュラさん……貴方はとてもお優しい方です……争いなど似合いません」

「……そうだな。悪かったな骨美……こんな俺を許してくれるか？」

「勿論です……」

「骨美……」

「デュラさん……」

　なんだこれは。

　ラブロマンスは好かんし、全くもってウザったい。

　骨女の邪魔で台無しだ。

　さっさとご退場願おう。

「おい、骨女。部外者は外野に消えろ」

「え？　あ、背骨を？！　アバラバラ……」

「バラバラになっとけ」

「ほ、骨美ぃいぃぃいい！？」

「さぁデュラハン。最終奥義をやれ」

「今そんな状態じゃないだろ！　今戻してやるからな骨美！」

　せっせと骨女を組み立てるんじゃない。

　もう貴様を相手するのも疲れたぞ。