第49話生活感の溢れる精霊王

 火蜥蜴女め、へこへこ揉み手して、機嫌が損なわないよう振舞いやがってる。


「あ、あの~新魔王様~」

「何だ」

「そのー……精霊王様は、ワタシについて何か言ってませんでしたか?」

「知らん。だが、今聞いてやる」

「え」


 強制信託すれば、精霊王と会話は可能だ。

 火蜥蜴女にも会話が聞こえるよう、手を握ってやったが、にぎにぎ握り返すな。

 どれ、軽く念じてやるか……お、気付いたみたいだ。


《はいはいはい? コチラ精霊王だけど? どちらさん?》

「私だ」

《ぶっぅうううーっ?! そそそそその声は!? ゆゆゆ勇者様?! なぜ急に突然にどうして!?》


 精霊王の奴め、何か食ってやがったな。

 汚い吹き出し音が聞こえたぞ。


「一つ聞きたいことがある?」

《な、何でしょうか?》

「四大精霊の火の精霊を、貴様はどう評価してる」

《さ、サラマンダーちゃんの評価? ちょっと資料持ってくるんで、少々お待ちを!》


 ガサゴソ物色音に混ざって、洗濯機の回ってる音が聞こえるぞ。

 一般庶民の家庭か?

 精霊王なのか疑いたくなる。


《あったあったあったーえーっとですね……あー容姿端麗でも、上司に媚び諂うのはマイナス、って評価ですね》

「だそうだ」

「悔い改めます……ぐすん……」

《え? サラマンダーちゃんいるんですか? わーマジでごめんなさい! 評価は本当だけど、気にしないで!》


 死体蹴りもいい所だ。

 火蜥蜴女が涙を流して横たわったぞ。

 まぁ、どうでもいいが、私も精霊王に用がある。


「私からも一つ聞きたいことがある」

《え。な、何ですか?》

「貴様の住処はどこだ」

《て、天界ですけど……》

「そうか。また神託する」

《え、ちょ! 何で聞いたか教え》


 住処が天界なら魔の者の敵だ。

 近々天界に行く方法を吐かせ、住処にもお邪魔してやるか。

 そして天界を統括するいい機会かもしれんな。

 今からワクワクしてきたぞ!


「ぜぇ……ぜぇ……や、やっと着いた……ぜぇ……ぜぇ……」

「何だ貴様か。変質者かと思ったぞ」

「溶岩遊泳する勇者様の方が、よっぽどですって」


 ふざけた口に溶岩イッキするぞ。

 そうだ、右腕を天界に強制連行してやるか、ふふ。

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