第48話サラマンダーは逆らえない

 溶岩遊泳から早数十分、半裸男が溶岩山の穴倉に入ってたな。

 ほぉ、中の奥地に陸地があったのか。

 おもてなしの準備に勤しんでるが、急ピッチでやってるな。


「一人でやるのか」

「ん? え、あ、ちょ? もう来たのか?」

「まぁな。見学しておくから手を動かせ」

「お、おぅ! 火ポッポー達! 仕事の時間だ!」


 溶岩海から火の粉玉が無数現れたな。

 一つ一つに目ん玉と腕が生えてるが、ミニキャラみたいで可愛らしい。

 即席椅子に腰かけて待つとするか。

 

 どんなおもてなしか、ワクワクするな。


 ん? 入口方面から鼻歌が聞こえてくるな。

 右腕じゃない、女の声だ。

 ジャブジャブ猛スピードで溶岩海を泳いできてる。

 新手の魔の者か?


「そーれ♪」


 全身火に包まれた女が上がって来たな。

 尻尾と二本角が生えて、大トカゲの変形姿に似てるな。


「イフリート様♪ 発火シャツのアイロン掛け終わりました♪」


 なんという猫撫で声。

 吐き気を催す嫌悪感に襲われるぞ。

 半裸男に燃え上がるシャツを手渡し、もじもじ恥ずかしがってる。

 分かり易い矢印なこった。


「いつもありがとうな!」

「好きでやってますから♪ 今から何かあるんですか?」

「お、そうだったな! まずこの方に挨拶だ!」


 ずいずい近付いてきたな。

 挨拶なら聞いてやる。 


「新魔王様! 彼女は我の部下である、サラマンダーだ!」

「……どうも」


 猫撫で声を止めて、睨み付けだと。

 男にきゃぴきゃぴする、一番嫌いな女のタイプだな。


「貴様は大トカ……竜人族の親戚か何かか?」

「あんな雑魚種族と一緒にしないで。ワタシは四大精霊の火の精霊よ。唯一無二な存在なのよ」


 貴様が四大精霊の火の精霊だと?

 んなもん知らん。

 いけ好かん態度を改めんと、絶対零度で頭を冷やすぞ?


 手に冷気を纏わせたが、半裸男が何故か頭を下げていた。


「すまねぇ新魔王様! コイツ、我以外にはこんな態度になるんだ!」

「……そうか。しかしだ、四大精霊の貴様に一つ言っておく」

「なによ……」

「私には精霊王の加護が付いている」

「せ、精霊王様の加護!? あばばばばば!? ごごごご無礼な態度をとってしまい、申し訳ございませんでしたぁああ!」


 ガクブル震えて何度も土下座。

 精霊の序列は精霊王の方が上だったみたいだな、ふふ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る