第47話五階層 インフェルノ

 エレベーターの壁にもたれ掛かり、次なる階層へと向かっている。

 あぁ、色白よ……。

 次会う時、お姉ちゃんと呼んでくれるだろうか……。


「ゆ、勇者様……元気出して下さいよ」

「貴様が原因だ!」

「ぐべ?! ちょ、壁に重力掛けないでぇ!」


 壁と同体化してしまえ。

 エレベーターが止まって、異様な熱気が吹いてるが、精霊王の加護とやらで常に最適環境だ。

 何ら問題ない。


「いつまで壁と戯れてる。行くぞ」

「ふはっ! り、理不尽!」

「何か言ったか?」

「何もー」


 熱気で毛根にダメージを負ってしまえ。

 道なりを進むにつれて熱波になってるな。

 空気もうねうね歪む異様な灼熱だな。


「着きました。よっと!」


 右腕が鉄扉を開いた先は、真っ赤に照り付ける灼熱の溶岩海だった。


「えー五階層はインフェルノになります」

「一面溶岩景色だな。見るまで忘れてたぞ」

「酷いですね」

「貴様が考えたんだろう」

「えへ?」


 丸焦げ溶岩しゃぶしゃぶにするぞ。

 残念だが、炎耐性持ちの右腕は痛くもかゆくもないだろうがな。


 ん? 

 溶岩海の奥から、飛沫がジャバジャバ近付いてきてるぞ。


「お、来てくれたみたいですね」

「出迎えか。礼儀の分かる奴だ」


 高々に飛躍した出迎えは、私達の前で可憐に着地。

 炎を纏った半裸男か。

 手に水かきや尻尾があったりと、半魚人を彷彿させるな。


「ヌハハハハハ! 我はイフリート! インフェルノの主である!」

「その口調ウザいぞ」

「知れたこと! そもそもお前らは誰だ!」


 出た、毎度お馴染み自己紹介パート。

 命に従い、私の分まで紹介しておけ、右腕。


「って事なんだよーよろしくね」

「ヌハハハハハ! なら、このイフリート! 新魔王様の為に、盛大におもてなしさせて頂こう!」

「おぉ、気が利くな半裸男」

「ただ時間が掛かるだろうから、我は先に行き準備させて貰う! ヌハハハハハ!」


 美しい飛び込みで溶岩海に身投げか。

 奥へ奥へと飛沫を立てて、あっという間に姿が見えなくなったな。


 先に行くと言ってたが、場所を伝え忘れてるぞ、半裸男め。

 だがまぁ、盛大なおもてなしの為だ。

 のんびりと後を追ってやるか。


「えー……じゃあ、近場の小舟を借りてくるんで、少々お待ち下さい」

「小舟だと?」

「ゴーレム製の溶岩耐性付きですから、大丈夫ですよ」


 違う、問題はそこじゃない。

 何故麗しき私が貴様と2人きりで、小舟に乗るのかと言ってるんだ。

 湖畔の小舟デートも同然だろうが。

 流石に、心広い私でも受け入れ難い。


「えっと、どこだっけ……お、あったあっ……って、何でビキニ姿に?」

「貴様と小舟に乗るなら、泳いで行く。じゃあな」

「ちょ?!」


 さて、優雅に溶岩遊泳としゃれこもう。

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