第35話三階層 ミノタウロス闘技場

 エレベーターにも乗り飽きたな。

 このまま天井をぶち抜けば手っ取り早いな。


「ん? 勇者様? 何してるんですか? 早く行きますよ」

「天井を破壊して、三階層へ行く」

「普通にダメです! 修理費も馬鹿にならないんですよ!」

「ゴーレム仙人に頼めばいい話だろ。それ!」


 天井をジャンプパンチで貫き、妙に広々とした空間に出てきた。

 三階層は確か、牛頭共と戦った場所か。


 しかしながら、私の知っている場所ではなく、闘技場のど真ん中だぞ。


『おーっと! ここに来て、謎の侵入者の登場だ!』


 随分とギャラリーが盛り沢山じゃないか。


 でだ、急に現れた私を見つめる、二体の汗だく牛頭がいるな。

 コイツらのタイマンに乱入したって事だな。

 ふふ、実に面白そうじゃないか。

 相手になってやろう。


「お嬢ちゃん。今すぐ俺らの前から消えた方がいいぞ」

「何故だ」

「ここ闘技場のルールはシンプル、勝者は1人だけなんです」

「ほぅ、で?」

「で、って、俺様達とやり合う事になんだぜ?」

「女性を傷付ける気はありません。どうかご退場を」


 ふっ……随分と甘く見られたもんだ。

 せっかくの機会だ。

 コイツらに真の敗北を教えてやる。


「2体1だ。同時に来い」

「たく……俺様達を恨むんじゃねぇぞ!」

「心苦しいですが、お望みであるならば相手になりましょう」


『これは予想外だー! 謎の美女は一体どうなるんだ!』


 五月蝿い実況だが、ギャラリーは盛り上がってるな。

 そんなに楽しみたいなら、全員楽しませてやる。


「な、なぁ弟よ。嬢ちゃんが2人に増えてないか?」

「えぇ増えてますね……どんどん増えてますよ!?」

『え? 何これ? どうなってるの?!』


 どうもこうもない。

 分身の力で私を量産してるだけだ。

 これでギャラリーも心置きなく、私の分身とリアルファイトができるぞ。


 早速分身がギャラリー共と対峙して、リアルファイトが始まったみたいだ。

 とっても愉快愉快。


「さぁ、私の相手は貴様らだったな」

「しょ、正気じゃねぇ!」

「で、でも、やるしかありません! ここで逃げれば、ミノタウロスの名が廃ります!」


 おぉ、コイツらはミノタウロスって言うんだったな。

 二体とも頭部に立派な黒角を生やしてるじゃないか。

 私の角コレクションの一部にしてやろう、光栄に思え。


「せりゃああああ!」

「とりゃぁああああ!」


 大声で突っ込んで来るだけか?

 見掛け倒しにも程がある。

 面倒で残念な貴様ら二体とも、素手で止めてやる。


「あ。ちょっと! びくともしないんですけど!?」

「つ、角を離して下さい!」

「今から私の角だ。お前らのものではない」


 小枝のように角が捥ぎ取れたな。

 牛頭共は白目剥いて、泡吹いて失神か。

 どうせ新しいのが生えるのだろ? 

 私の魔王就任祝いの品だと思えば安いものだろ。

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