第36話勝者の新魔王

 

 失神牛頭共を椅子にしてるが、座り心地がいまいちだな。

 だが、私の分身とギャラリーのリアルファイトを眺めるには丁度いい。

 いいぞ、もっとやり合え。


「ぷふぁ! うわ?! どうなっちゃってるの?!」

「ようやく上がって来たか、右腕。早く来い」

「急かさないで下さいよ! よいしょっと……ゴーレムの皆ー足場になってくれてありがとー」


 ゴーレムの手を借りんと上がれなかったのか、ぷぷ。

 たかが百メートル弱の高さなのに、情けない。


「で、勇者様。この有様は?」

「見ての通り、ギャラリー共を私の分身と戦わせてる」

「馬鹿なの?! 今すぐ止めて下さい!」


 馬鹿とはなんだ、脳味噌シェイクしてやるぞ。

 だが、リアルファイトも飽きた頃だ。

 寛大な私に免じ、大目に見てやる。


 指パッチンで分身を帰し、場内が疲弊の声で溢れかえった。

 だらしない連中ばかりだ。

 たったの数分間だぞ。

 今度魔の者達を集め、みっちり訓練させるか。


『ぜぇ……ぜぇ……しょ、勝者……は……し、侵入者の方……デス……カハッ……』


 ほぉ、実況の奴め。

 最後まで仕事を貫くとは、中々感心だ。

 これで静まった事だ、右腕に案内させるか。


「右腕、裏事情へと案内しろ」

「え? あ、はい。こちらです」


 通路の奥へ奥へ進んでるが、何故魔の者連中は奥に行きたがるんだ。

 無駄に足を使わせた挙句、貴重な時間を浪費してるんだぞ。

 分ってるのか?

 空間移動は必ず一度訪れないといけない、デメリットがあるんだぞ。

 全く不便な魔王城も、見学を終えた暁には、大規模な城内改装してやる。


「あ、そうですそうです。勇者様、一応ここの説明させて下さい」

「ん? あぁ」

「えー既にご存じでしょうが、三階層はミノタウロス闘技場になります」

「だろうな」

「一応誰でも参戦可能ですけど、脳筋勇者様には物足りないですよねーはは」


 この私をナチュラに脳筋と言ったな、貴様。

 後で爺顔に戻してやる。

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