第14話女王スライム

 階段の行き着いた先では、中々な広さの空間に、スライム達が床を這いずっていた。

 私達には見向きもせずに無関心。

 不要な接触をせずに済むならその方がいい。

 あの糞赤オーガもスライムを見習うべきだ。


「もう少し先ですんで、ほら」

「指図するな」


 右腕を先導に、変わらぬ景色といやらしい音を聞きつつ、歩みを続けた。

 

「ここになります」 


 照明が眩しい白い部屋だな……。

 雑魚スライムの姿が見当たらないが、親玉でも待ち受けているのか?


 ん? よくよく見たら、部屋の中央床に穴ぼこがあるな。  

 あの中に入れというのなら、面倒くさいぞ。

 私は逸早く体を清めたいんだ。

 右腕はそれを理解しているんだろうな?


「すみませーん! 姿を見せてくれませんか!」

「おい、急に何を言い出してるんだ」

「呼び出しただけですよ。ほら、ちゃんと聞こえたみたいですし」


 ……穴から気味悪いゴボゴボ音が鳴ってるな。

 コイツは何を呼び出したんだ?

 いつも主語が抜けてて、理解に二度手間なんだぞ。

 私のストレスがグツグツ煮えている中、緑の粘液が穴から噴き出た。

 汚い、ひたすらに汚いぞ。


「まさかこの汚粘物で洗えと?」

「まぁ、そうですね」

「よし、分かった。貴様をスライムに変えてやる」

「ちょ!? その手止めて下さい! マジで痛いんですから!」


 スライムになってしまえば、そんな痛みもなくなるのに、何を言ってるんだか。


 右腕改造計画を迫っている中、汚粘物は一か所に集い、人型らしきものへと形成されていた。

 ほぅ、人型のスライムとは初見だな。

 ただ根本的な意思疎通ができないのなら、人型であっても無意味ではないか?


「ヨイショーキタヨー」

「なに? スライムが口を利けるのか?」

「そ、それもその筈ですよ! こちら女王スライムさんですから!」

「ハァーイ、ドウモーハジメマシテー」


 緑の半透明な女体だな。

 ぬるぬるテカテカして妙にエロティックだ。

 だが、私の体の方には勝らないな! 

 ふふーん!


「何してんですか?」

「我が肉体をアピールしていた」

「は、はぁ」


 呆れていやがるな、この糞野郎が。  

 脱がなくてもスゴイ、脱いでもスゴイことを教えてやる。

 

「ソレデーナニカヨウー?」

「あ、そうだった。まずは挨拶ですね。えーっとこの方が新しい魔王様で、ワシが元魔王です」

「モトマオウー? ソンナノイタノカー」


 スライムにすら認識されていなかったのか。

 どこまで残念なんだ貴様は。

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