第3話 異世界
そう。
でも、王川勝利が選んだのは僕だった。
「怒んないでよ。
僕の名前は、
あの日、僕はあのトイレでびしょ濡れで泣いていた。
「由宇ちゃん。行こう」
「だから、そういうのやめて」
「いいだろ。由宇ちゃんは、ツンデレなんだから」
勝利は、僕の手を握りしめてブンブン振って歩く。
「おはよう。相変わらずだね」
「木崎は、俺達に妬いてるの?」
「まさか、王川と佐々目の美しい二人の恋を邪魔する事はできないよ」
クラスメート達は、みんな同じ。
一つだけ違うのは、この学校には女子はいない。
ここは、男子校だ。
そして、この学校で僕は王川勝利と付き合っている。
「相変わらず美男カップルだね」
「目の保養になるよ」
「美しいとは、二人の事だ」
みんなは、僕と勝利を褒めてくれる。
勝利は、わかるけど……。
僕は……。
「相変わらず、なれない?その顔」
「あっ、うん」
こっちに来た僕の容姿は違う。
鬱陶しい前髪は、綺麗に整えられ、細い目は綺麗な茶色のパッチリした目にかわり、鼻筋はスッとしている。
まるで、漫画の中の人だ。
勝利は、向こうよりさらに綺麗になっていて。
絵画のような美しさだ。
「本来の由宇ちゃんは、それなんだから。もっと自信持てばいいんだよ。ってか、自信持たなかったら嫌味だからね」
「かな?」
この、
この学園で、豚と呼ばれてキモいと言われているのは僕を向こうでいじめている
「こっちの世界を知らない彼らは、
「あのさ、王川君」
「勝利って呼んでるくせに、白々しい」
「あっ」
そうだった。
こっちに来た勝利は、心が読める。
だから、勝利に嘘はつけない。
「あのさ、勝利。どうして、僕をここに連れて来たの?」
「だって、向こうにいたら由宇ちゃんにはいつまで経っても近づけないだろ?それに俺は、出会った時から由宇ちゃんが好きだったわけだから」
心臓のドキドキが聞こえるほど、顔を近づけられる。
「キスするのか?」
「してもいいよ。みんな、目を瞑ってるから」
「まさか、するわけないだろ」
僕は、教室を飛び出す。
廊下を歩くとみんなが僕を見る。
「やっぱり、綺麗だよな」
「どうしたら、あんな顔になれるんだ?」
「生まれ変わったら、佐々目先輩みたいになりたい」
向こうではけして味わえない羨望の眼差し。
慣れないけど、嫌じゃない。
「由宇ちゃん、待ってよ」
「だから、まだ答えは出してない」
「またそうやって。俺を遠ざけようとしても無駄だよ。俺は、由宇ちゃんを好きなんだから。由宇ちゃんが嫌だっていうなら、ここに連れてくるだけだから」
「それは、卑怯なやり方だよ。勝利」
「俺達が愛し合う為には、こっちに来なきゃ駄目なの」
「だからって僕を巻き込むなよ。僕は、男が好きだなんて言ってない」
「じゃあ、俺の事嫌いなの?」
「だから……」
うるうるとした大きな瞳。
プルっとしたピンクの唇。
僕を惑わせて楽しんでる。
「惑わせて何かいないよ。俺は、ただ由宇ちゃんとこの世界に来たかっただけなんだよ」
「人の心、勝手に読むなよ」
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
「授業が始まるよ!由宇ちゃん、戻ろう」
「うん」
こっちで授業を受ける必要なんてないと思ってた。
だって、向こうとは別の空間なのだから。
だけど……。
学校の中の異世界 三愛紫月 @shizuki-r
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