第2話

僕が席を立つとクラスメート達は、喜んだ。



「チッ」

「やっといなくなったよ」

「あーー、空気がよくなった」


そんな声を聞きながら、僕は歩いて行く。

このクラスだけじゃない。

僕は、歩く度に気持ち悪いと言われるのだ。

学年は、関係ない。


鬱陶しい前髪のせいか?

この細い目のせいか?

ボテッとした鼻のせいか?


見た目だけじゃないのかも知れない。

僕は、嫌われてる。



男子トイレに入る。

別に、トイレをしにきたわけじゃない。

授業が始まるまで、隠れていたいだけ。

だって、授業が始まればクラスメート達はみんな先生に夢中だから。

僕に文句を言ったり、追い出したりする事はない。

だから、この場所だけが僕の唯一の居場所。

唯一の居場所だったのに……。



「遅くなってごめんね。行こう」

「待ってないから」

「わかってるよ。仕事は、ちゃんとしてもらわなきゃ駄目だよね。俺達のかわりに……」



トイレの掃除用具入れを開けると僕達が教室に戻っていく。


「凄いよな。あれが、ロボットじゃないって所が」

「僕は、まだ向こうに……」

「はいはい。それは、向こうで聞くからね」



奥から二番目の個室トイレに入れられる。

彼は、迷わず鍵を閉めてジャーっと水洗を流した瞬間だ。

ぐるんと目の前が回る。

脳が揺れる感覚がして吐き気がする。



「大丈夫?」

「だから、触るなよ」

「まだ、怒ってんの?」



僕には秘密がある。

いや、僕達には秘密がある。

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