第11話 小さな違和感

コツン。コツン。


男の歩く足音が、廊下に響いている。




あれから、十数年前の話になる。

男は、語り掛ける様に 話した。


仕事でO温泉に 同僚十数人と二週間の間、ここに泊ることとなっていた。

「和風で小ぢんまりしているが、キレイだし、良いんじゃないか。」誰から外もなく、気に入った様だ。


しかし、奥まった廊下を歩き、階段を登り始めると 何時の間にか様相は変わり、古呆けたビルに通された様に感じられる。


部屋は四階の更に奥まった大部屋であった。

「まあ、寝るだけだからな。」

何の気なしに誰かが、呟いた。


男たちは、部屋に入り 所々に陣取り荷物を置き始めた。


誰から外もなく、ビールから酒盛りが始まる。


宴も盛り上げる半ば、

「何か、この旅館変で無いか?」

「玄関は普通何だけと、廊下を行くに従って、暗く不気味な感じがするんだけど!」


「特にこの部屋、奥まっていて 周りにの部屋に客が居るのかな?静か過ぎてない。」


確かに、周りの部屋から物音一つ聞こえない。いや、人の気配すら感じられない。


「案外、こう言う部屋は、事故物件だったりしてな。」


「そうそう、そう言う部屋に有る絵の裏に大概、お札が有ると聞くけど!」

その言葉に、皆の目は部屋に有る絵画に注がれた。


「まさかな?」誰かの声。だけど、誰も絵を見詰めるだけで、足が動かない。


不意に、誰かが「噂話だろ。本当に有る訳無いよ。」と笑いながら立ち上がり、絵画の裏をめくった。その手は、そこで止まった。


結果は見るまでも無く、知られてしまった。

後は、誰から外もなく 自然と、布団のなかで寝入っていた。


不気味だが、何が起こるでも無いが、男たちの会話は少なくなり、毎日は、会社と宿の往復のみとなる。


それから二週間が過ぎて、男は家に帰った。

男の内心は、宿から逃げれる事からの安堵が占めていた。


しばらくした後、その会社に日帰りで行く機会が有った。宿に残った男たちが 少し気になっていたからだ。


話に寄ると、男が帰った後、残った男たちは全て、やどを出て会社の寮に移動していたとの事。その際に何が有ったのかは、語られなかった。

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