自衛隊のオープンキャンプを歩く 激突!軍事演習編
★軍事演習見学へ
メインイベント会場だけあって、すし詰めの熱気が凄い。
巨大スピーカーからは、映画「ミッション・インポッシブル」のBGMと、(女性自衛官による)解説のアナウンスが響く。
パン! パンパン!! パパパパパン!!!
『おお、両軍が少しずつ距離を詰めて・・音響弾(実弾を模している)を撃ち合っているねえ。
あそこに潜伏していたスナイパーさん、3時間も前から微動だにせず、潜伏していたんだって。ここはまさに、日頃の訓練の成果を出す場所だねえ。』
これはあくまで「試合形式」なので、実戦とは違いますけどね。
前掲書(自衛隊のトイレットペーパー)によると、普通科連隊の隊員は、1回あたり20〜40発の訓練を、月1くらいで行うようです。
一方、クレー射撃の強豪選手は1日に100発。一ヶ月あたりに換算すると「自衛隊員40発VS射撃選手3000発」という大差です。自衛隊の練習の少なさが分かりますね。
予算不足、練習場不足、災害派遣などが重なった時間不足。しかも自衛隊は行政組織なので、銃刀法の縛りを受けてしまい、訓練自体の柔軟さも下がっているのですね。
『あははー。また戦前の日本軍を思い出すなあ。それこそ、「40対3000」みたいな差をつけられ、何もかも足りない状態で戦争するなんて、今じゃ考えらんねー。』
まあ、あの戦争はハル・ノートがあったので「日本は譲歩の極みへと達したが、それでも戦争を避けるすべは無かった」ので・・あくまで当時の基準では、他にやりようがなかったとも言えますが。
ただ「現在の問題点」が明らかになっているのに、それが改善されずに、2年以上放置された事が問題なのです。コロナ騒動でも、外国がマスクを外すまで2年、日本は3年10ヶ月。皇位継承問題においては、20年近くも放置されていますね。
『一度決めた事を、変えることができない。【そういう国民性だから仕方ない】と言って諦めるには、あまりにも深刻な問題だよねえ。
(バラバラバラ・・ビュオッ!!)
・・・・うわあああっ、と、飛ばされるうううっ!!』
あだだだだっ!! 先輩、だからって俺の髪を掴まないで下さいよ抜ける、抜けますから!!
ふと上を見ると陸自のヘリが、地上に近い場所でホバリングして、大きな風圧を発生させていた。こりゃ、色々と飛ばされそうで危ないな。
ドアが一斉に開き、4つのロープが垂らされ・・・4人の隊員が、それを伝って降下する!
会場からは一斉に拍手が送られる。
『こうした降下は、戦場のみならず、災害派遣においても必要だよね。
自衛隊と災害救助隊を分けないでひとつの組織にしていくなら、【両方に使える訓練】に、力を入れないとねー。』
ドオオオン!!
大音響と共に、高射砲が火を噴いた(比喩ではなく、本当に炎と黒煙が上がっている)。
これは「敵のヘリを追い払う」という設定で、打ち出されたもの。
『高射砲! ドイツのロンメル将軍(1891〜1944)もエジプト戦線で【英国軍の戦車は装甲が厚いが、これで撃破せよ】と指示していたよね・・威力は抜群だ。
まあ、メンテをする予算も人員も足りてない今、肝心な時に活かせなかったら困るけどね。』
いやホント、それに尽きるのですが・・・。
ただ、これ以上に実践的な訓練もありますよ。
例えば富士の裾野で行われる、総合火力演習(総火演)とか。
最新だと2024.5.26ですね(サイト:Jディフェンスニュースより)。
戦車砲などの高火力を、一斉にぶちかます演習・・・現在では一般公開されず「富士学校の生徒に、火力戦闘の様子を認識させる」目的のようです。
戦車が時代遅れとも呼ばれる昨今、UAV(無人航空機・ドローン兵器)への対策をメインとした演習だったとの事。
まあ、戦前の真珠湾攻撃も「航空機で戦艦を叩く」のが成功した事で、諸外国の間では「戦艦は時代遅れの兵器、これからは航空機に対策するのがメインだ」となり・・結果的に「戦艦大和から、活躍の場を奪う」結果になったのは、どこか皮肉ですがね。
『うーん。それと航空自衛隊の「スクランブル発進」も重要だよね。
領空侵犯の恐れがある航空機に対し、自衛隊の戦闘機が緊急発進し、警告などを行う措置のこと。9.23にはフレア弾の使用が行われたみたい。
年間回数としては、2021年度が1004回(過去二番目に多い)、それ以降も年間700件前後と、昔より増えているねえ。相手の割合としては中国機72%、ロシア機26%だそうな。』
まあ、スクランブルは訓練どころか「外敵への実戦」という側面が強いですよね。
でもこうした訓練がないと、いざという時の防衛は、機能しないですから。
いわゆる「常備軍」はコストが高いですし、自衛隊の武器・弾薬・人員(いずれも足りていない)を確保するのも、同様でしょう。
しかも、米軍に払っているカネも(前話で指摘したように)馬鹿にはならないですし。
『現在は与野党ともに【増税】は、避けられないみたいだね。ただ【何のために増税するのか】という違いがあるだけで。
社会保障費増大による手取り減、インボイスによる実質増税、物価高による実質賃金低下。
一方、法人税などの【聖域】は、手つかずの所すらあるし。
もう市民は【健康で文化的な最低限度の(普通の)生活】をすることすら無理ゲーの状態だし・・これで増税を受け入れられるのかな?』
うーむ。詳しくは後述しますが「国民国家では、一人ひとりの国民に(潜在的な)国防の義務がある」といえます。
自分で銃を取って戦うか、代わりに増税を受け入れて国に貢献するか、みたいな話なんですよね・・この厳しい現実は。
今の日本人はどちらも拒否するでしょうが・・それでは最終的に日本国を、地図上に維持する事は出来なくなる・・と、俺は考えています。
『・・はあ、この国の経済も国防も国民生活も、いよいよ坂道を転げ落ちていってるねえ。
この荒廃の時代に、何を守って何を諦めるのか・・国民一人一人が、考えなくちゃいけないよね。』
相手軍の陣地の戦車が陥落し、演習は決着がついた。
だが日本の抱える山積みな問題は、どれもこれも決着の兆しがない。
俺は先輩を頭に乗せ直し、暗澹たる気分で戦場を後にした。
次は展示会場。多くののヴィークル(戦車やヘリ、高機動車など)・装備品・戦前の遺産が、俺達を待っている。
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