自衛隊のオープンキャンプを歩く 休息&厚生センター編
★屋台村でひと休み★
ジュウウウウウ!
巨大な鉄板の上で煙を帯びながら、ごろっとした鶏肉のカタマリが転がされていく。
普通の肉、赤い辛口肉、黒焦げの残骸肉(焦げ臭い、さっさとどかしてくれ!)。
二つ折りのトルティアパンに、キャベツとマヨソースをぶち込み、その上に辛口肉。
黒人店員さんからケバブサンドを受けとると、飲食広場に向かうが・・
『うおお、すし詰め状態じゃん!グラウンドでも思ったけど・・こんな山奥に、予想以上の人出だよね!』
災害派遣の度に、自衛隊の好感度は上がっていますし。
この状態自体は、好ましいと思います。
それが「国民の声」となって、自衛隊の内情(特に予算面)の改善に役立てばいいのですが・・
道路の端に座って飲食している人も多いし、俺もそうする事に。
兵舎裏の自販機では、500mlジュース110円。山奥の自販機でありながら、「値上げラッシュ前の安自販機」と同レベルで、コード決済にも対応。
まあ、これくらいはマシと言えるポイントなのかな。
・・あ、別店舗で買ったガパオライス、目玉焼きがちゃんと半熟だ。地味に嬉しい。
『じーーーーっ。じゅるり。
はあ〜。アタシゃ
まあいいや、アタシの年収は作者くんよりメッチャ多いし、後でたくさん食おうっと。』
(グサッ)自分で創造したキャラに、年収マウント取られるとは!
・・しかし、適度な辛さがいい感じだ。自衛隊のミリメシにも「ドライカレー」などはあるけど・・「行軍中に喉が渇いてはならない」という理由で、辛さは控えめなんだとか。
土産物屋も出ているけど、今は荷物を増やしたくないし。
美術展が開かれている「厚生センター」に行ってみようか。
★日米軍の福利厚生について★
参考文献:小林よしのり「沖縄論」小学館
松竹伸幸「日米地位協定の真実」集英社新書
ここは厚生センター。散髪屋・コンビニ・自衛隊用品店などが集結した・・いわば「日用品の購買部」に近い施設。
コンビニは広めで「海軍カレー詰め合わせ」などのお土産品も扱っている。
『ほうほう、美術展の出品作は、結構バリエーションがあるねえ。
油彩画、水彩画、昆虫標本、切り絵、編み物、紙細工、航空機模型、ガンプラ、デュエマの立体カードなど・・・』
通路に沿って展示されている美術品は、自衛隊員やその家族が作成したもので、人気投票もやっているようですね。
『でもさー。外出を制限されている隊員たちにとって、ここの買い物だけだと、色々と足りなくなーい?
長期外出のときも、二時間刻み&どの道を通るかで、事細かく行動計画表を書かないと駄目だし。それで「休暇の前に、計画段階で疲労してしまう」とすら言われているし。』
移動が厳しく制限されている以上、よりよい住環境を整備してあげないと・・防衛のモチベーションも上がりませんよね。隊員たちは「理不尽に耐える粘り強さ」があるとはいえ。
こんな状態を放置しては、国民としても後ろめたい気持ちがあります。
『あーあ。「思いやり予算」を潤沢に使える在日米軍って、羨ましいよね。
例えば沖縄の基地だと大きなスーパーはもちろん、兵隊の家族住宅(インフラ使い放題)・病院・図書館・劇場・映画館・ディスコ・ナイトクラブ・ビリヤード場Etc・・あまりにも豪奢すぎん?』
日米地位協定(24条)は元々、駐留経費負担において・・
日本6:アメリカ4くらいを想定していたはずなのですが。
同協定3条の拡大解釈、いわゆる沖縄密約のひとつ「24条へのリベラルな解釈」、1987年以降の「特別協定」が、ズルズル引き伸ばされてきたこと・・などが重なりに重なって。
ゼロ年代の初期には日本55:アメリカ1にまで、日本側の負担が強まっています。
ああ、その内の少しでも自衛隊に回せればいいのに。
防衛力と言うなら、他国よりも自国軍(戦力ではない)を優先させるべきなのに。
『うーむ。やっぱ憲法の問題だよなあ。
自衛隊は軍隊ではないし「専守防衛」で。他国の敵基地を攻撃するときでも、現憲法との食い違いが出てくるから。
これは家に泥棒が入っても「追い払うことは出来るが、警察権を行使して逮捕する事はできない」と、似たようなものだよね。
だったら「フルスペックで戦える米軍が優秀なので、そっちに予算を回そう」というのが、ある意味では合理的なんだろうね。』
いくら合理的だからって・・他国の政府があれこれ理由をつけて「有事の際に、他国軍が思ったような動きをしてくれない」なんて、十分にありえますし。
それで日本は、制空権の一部まで奪われている(横田空域問題)状態ですし。
自衛隊が「不完全な部隊であり、予算をつけるのが後回しにされる」のは・・やはりフルスペックの軍隊ではなく、米軍の補完がないと、完結し得ない組織だからでしょうね。
『存在自体が「違憲」の疑いさえあるのに、解釈改憲でズルズル引き伸ばしている感じだよね。
やっぱりさあ。戦時中の日本軍から「しょぼさ」を引き継いじゃっている感が強いよねえ。』
ああ、良さげな美術品を前に、暗澹たる気分になってしまいました。
ここはアレだ、気分を変えるためにも、目玉のアトラクションに行くしかないでしょう。
『だよね。さあ、グラウンドに戻ろう。
そろそろ、軍事演習の公開パフォーマンスの時間だからね!』
また人が多そうだなあ・・序盤の時点で「見えない!」と思ったら、裏道でも探しに行こうかな。
先輩を頭の上に乗せて、再びグラウンドを目指す。
『うう、またトンボまみれになりたくねー。
作者くん、キッチリガードしてくれよお。』
ーー到着したけど、人混みもトンボ混みもキツイなー。
開始のアナウンスが流れ、赤組・白組の部隊がグラウンドに展開する。
いよいよ始まるぞ・・・
【作者注】憲法や横田空域については、後の章で詳しく扱います。
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