自衛隊のオープンキャンプを歩く 貧困調査編

 ★自衛隊の予算は、本当に無理ゲーなのか


『ええっ、自衛隊の予算って、そんな酷いことになってんの?』


 隊舎1Fのロビーは、一般客が休憩している場所。

 そこで先輩に、前掲書(自衛隊は基地のトイレットペーパーを『自腹』で買う)の話をしてみたら、驚かれた。


『防衛費自体は、増えているんだよね。

 ただ、艦艇や装備を増やすのにばかり使われて。

 整備&修繕費・隊員の日用費&給料は、むしろ減らされているとか、信じられないよ。』


 このままじゃ歴史は、悪い方に繰り返されるでしょう。

 例えば、1894年の日清戦争がいい例ですね。


 清国の北洋艦隊は、(当時)世界最大級の火力を誇り、まともにぶつかれば、日本は負けていたでしょう。

 ただ清政府では、軍資金の不正流用が多発しており、更に「人件費削減」の名目で、技術指導員や乗務員を削減。これでは艦船を活かすこともできず、清は敗北しました。


 そして今。世界6位の戦力ともいわれる自衛隊も、カネ不足で兵装の整備が上手くいかなくなって。清軍と同じ運命を辿ってもおかしくない・・そう思いますね。


『思えば9.11テロでも、コストカットの悪影響が出ていたよね。

 身分を隠したテロリストが、米国内で飛行機の訓練を受けたり。

 手荷物検査が簡略化されて、凶器を持ち込みやすくなったり。』


 大事な所にカネをかけないと、セキュリティも不全になりますよね。

 京アニ放火事件も「職質が1回あれば防げた事件」ですし、チェック体制は欲しい所。


『しかも給料からは糧食費・光熱費・住居費が天引きされる(俸給表制度)から、手取りは少なく、転勤命令時の引越し費用なども(一部が)自己負担。しかも住居修繕も自腹。

 超過勤務手当もナシで、労基法は最初から、適用外の職種。

 これでは志願者不足もやむなしだね。』


 戦前の陸軍人は「貧乏少尉・やりくり中尉・やっとこ大尉」と呼ばれ、意外と貧乏だった事が知られていますが・・今の自衛隊は、それより酷いかもしれません。

 今いる建物も、外面と内面で老朽化が進み、修繕もあまりされていない感じですね(床や壁を観察した結果)。


 (ちなみに後で、隊員宿舎エリアも歩いてみたが・・宿舎は見た目からして、築年数が経っていてボロいイメージ。ガザ地区の建物との違いは多分、銃痕がついていない事くらいか?

 こんな辺境にまで、予算はつけられないのかなあと勘ぐりたくなった。)


『介護職も保育士も自衛隊も、やはり待遇が苦労に見合わないよね。

 皇室の維持費用(宮廷費・内廷費・皇族費の合計)も国民一人当たりで割ると、年間8円以下なのに「税金泥棒」扱いする連中さえいるし。


 そもそも「経済(経世済民)は卑しい」と考え、無駄にボランティア精神を要求する「嫌儲」の考えが、かなり蔓延している気がするよ。

 感謝の言葉より何より、同情するなら予算をくれ!って、安◯祐◯(家◯き子)のマネをしたくもなるねえ。』


 先輩、未来人(2111年生まれ)なのにマニアック過ぎます。

 ただ、医療と防衛費は「無限の二大金食い虫」と呼ばれていて、予算の上限が無尽蔵に増やせてしまうもの。

 「コロナ騒動中、ある病院経営者が補助金を受け取ったが・・半分近くの病棟を空床にし、有価証券の運用を増やし、捜査当局による追求をかわして逃げ切った」という事例もあるので。

 予算をどこまでつければいいかは、かなりの悩みどころですね。

 

 ・・ふう。では、この隊舎を歩き回って「壁や床の修繕されてない度合い」を調査するとしますか!!


『一般開放されていないエリアにまで入るのは、違反行為じゃねえのかな。

 どうにも気が乗らないねえ。』


(でも先輩、いつの間にかニカーブ【イスラム圏の女性がかぶる頭巾】をつけた、忍者スタイルになってる。上のお口と違って、行動は正直なんだなあ。)


 先輩を、俺の頭の上にパイルダー・オン。

 床や天井・壁をキョロキョロ見回しながら、2Fへ移動。

 俺、自衛隊の真ん中で不審者丸出しだわ・・


(『しっかし、照明が暗すぎねーか?隊員たちは光熱費も自腹だってのに【テレビを見るな、業務時間外に冷暖房をつけるな】とか文句つける連中がいるせいで、自由への制限も厳しいよな。

 ・・なあ、通りすがりの隊員さんがこっち見てるぞ。』)


(何食わぬ顔で行きましょう。

 壁が黒ずんでいるのも、照明が暗いと分かりにくいですね。

 手取り削減・インボイス疑似増税・値上げラッシュの時代、生活に余裕のない人が増えていると、公務員や皇室への風当たりも強くなるんじゃないでしょうか・・・)


 このフロアは洗濯室・用具室など、隊員の日常生活に関するエリアだ。

 ちなみに米軍は、基地内に様々な娯楽施設があるというから、待遇の差は歴然。


 戦前の日本軍と米軍も、予算面で圧倒的な差があった。

 原爆開発計画の費用ですら、米国20億ドル(ドル100円のときは2000億円)で、日本は600万円(途中で打ち切り)。


 戦前も戦後も何も変わらない。

 この惨状での「防衛増税」は、ある意味当然の事だが。これ以上の増税は、インボイスよりも巧妙にする必要があるだろうなあ。


『三階に着いたぜ。ここまで来ると、一般客は誰もいないねえ。

 ・・お、なんか掛け声が聞こえてくるぞ。』


(統率訓練でしょうか。

 指揮官の合図に合わせて、足を踏み鳴らす音が聞こえてきますね。

 気合の入り方が、こっちまで伝わってくるようです。)


(『なあ、隊舎がボロボロなのも分かったし、そろそろ退かねーか?

 見つかったら、どう言い訳するんよ?』)


(「隊員の貧困調査に来ました(キリッ)」で押し通せば・・・)


(『クラブ通いがバレた、どこぞの事務次官じゃねーんだぞ!!』)

(あだだだっ、こめかみをグリグリしないで下さいよっ!!)


 こうして(変な目で見られながら)隊舎を脱出した俺達は、ようやく飯に行くことにした。

 もう決まっている。エスニックフードの「あの屋台」に行くしかあるまい。

 ========== 

 作者注:他の参考文献としては、小神野真弘「歴史の授業で教えない大日本帝国の謎」(彩図社)などを参照しました。


 

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