自衛隊のオープンキャンプを歩く 閲兵式(観閲式)編

 ★オープニングの閲兵式で

 

 グラウンドへ続く、舗装された道。脇に見える緑地の上には、松ぼっくりがゴロゴロと。

 ここが山奥だと、嫌でも実感させられますね。


『まあ、市街地に基地があると、地元民から〈訓練中に騒音を出すな!〉みたいな批判も来るわけだし。

 人里離れた場所で、ひっそり活動せざるを得ないんだろうね。』


 ですよねえ。沖縄の米軍基地は、市街地の近くの基地からヘリを飛ばして、(訓練中)街中を突っ切る事もあるくらいですから。もう騒音どころじゃないですね。

 2004年の沖縄国際大学・米軍ヘリ墜落事故の時はもっと酷くて。墜落現場を米軍が閉鎖し、日本の警察・消防・大学関係者を、全員締め出すという事態になりましたし。

 日本の領土なのに、日本人は誰も入れないんですよ。


 日本人が冷遇され、外国人が優遇される。

 これは自衛隊と米軍基地の違いもそうだし、過剰な外国人観光客オーバーツーリストも同じですよね。

 これは、日本人が本来持っているはずの「主権」が、軽視されているとも言えるわけで・・


『むう、話が長くなりそう。この件は後から、詳しく論じよっか。

 つーかさ。0〜10歳位の子供を連れた人が、凄く多い気がするんだけど・・』


 自衛隊は、夏休み期間中に「ちびっこ大会」「盆踊り」で基地を開放し、市民と交流しているようです。

 このときに自衛隊ファンになった子供が「リピーター」として訪れているのかも。


『ほうほう。

 天皇・皇族方も公的行為(ご公務)を通じて、市民たちの好感を得ているよね。

 被災地に膝をついてご訪問なさった時は、とても人気が出たし。


 週刊誌やWEBメディアが「売れるから」という理由で、皇室の悪口・悪評を書く事もざらで。

 皇族方が国民への思いを、具体的に示して下さるのはもちろん。メディアからの悪口を、具体的な行動で、払拭する必要があるんだよね。


 で、そこは自衛隊も同じかなあ。〈自衛隊はいらない〉という一部の意見が浸透する前に、市民や子供たちに、好感を持たせる必要があるのかも。』


 人気取り作戦といえば、そうですが。

 世知辛いことに、SNSありきの評判社会では、そうする以外にないのでしょうね。


『悲しい現実だね・・・あ、グラウンドに着いたよ。』


 席は・・一段高い来賓席、招待者専用席、一般客の席、立ち見の4つですが・・大多数は立ち見するしかないですね。


『ま、しゃーないよね。

 でもその分、適度な飲食や途中退席も自由だし、気楽に行こうぜー。』


 前座を務めるは、ラッパ隊の演奏。

 ラッパ役は、入隊1年の「新兵」の仕事のようです。

 ほうほう・・「起床」「稼業開始」「食事」「緊急伝令」「消灯」など、いくらかパターンがあるようですね。


『学校のチャイムに近いけど・・遠征地でもコレを合図に行動できるから、分かりやすくはあるよねー。』


 しかし人が多すぎて、全然見えないなー。

 とりあえず写真撮ろう、隙間からカメラを構えて・・・


 げ。指にトンボが止まって、上手く撮影できない。

 ・・つーか、トンボ多すぎだろ!

 いくら山中だからって、空を埋め尽くすくらい飛んでるじゃないか!


『むごもごもご・・・』


 げ、先輩の顔がとんぼまみれに。

 おら、あっちいけ、しっしっ!


『ぺっぺっ、トンボのせいで呼吸困難になるとこだったじゃねーか。

 あ、ラッパ隊の演奏が終わったら、メイン部隊がご入場だぜ!』


 ラッパのBGMにあわせ、秩序ある歩調で「ザッ、ザッ、ザッ」と入場したるは・・第44普通科連隊の方々ですね。

 1部隊あたり20〜30人で入場し、整列していきます。


 おお、こうして全部隊がグラウンドにズラッと並ぶと壮観です。

 車で観閲官(この駐屯地の司令官)が入場し、一般客(俺たち)も含め、起立して国旗掲揚を見守る。いよいよ始まりますね!


・・・・・


『・・ふああ。司令官あいさつはともかく。

 来賓挨拶(政治家さんたちのスピーチ)がスゲー長いねえ。

 一人ひとりは短めでも、人数が多いから。

 内容的には、自衛隊を激励するものだけど。


 隊員さんはその度に〈気をつけ・休め・敬礼〉を繰り返している・・。

 学校で行われる〈校長たちの話が長すぎる全校集会〉を思い出しちゃうね。』


 ただそうした集団行動の教育が、自衛隊のみならず、日本人に「一定の秩序感覚」を醸成した事も、否定は出来ないでしょう。

「災害時に暴動を起こさず、行列を作って辛抱強く待つ」も、そこから来ていると思いますし。


『でも作者くん。アタシらみたいに〈集団に馴染めなかった側〉からは、ちょいと複雑な気がするけどね。』


 それを言ったらオシマイですから。

 でも最低限の秩序に「合わせるふりをする」くらいは、どうしても必要ですし。

 その上で「どうしても譲れない一線」の時は、やむを得ず抗う、くらいにすればいいと思います。


 この後もイベントは続くようですが・・人が増えてきたし、一旦別の場所を見てきましょうか。


『だね。とりあえずは向こうにある建物に行くとしようか。』

 そうして俺達は、隊舎方面へと移動した。


『隊舎の前には・・総合案内所、射撃ゲームなどの縁日企画、あとはフランクフルトにかき氷の屋台などもあるね。』


 それぞれの隊舎は、一般客用に1Fのトイレ&ロビー(休憩所)を開放しているようです。

 でも俺は、ちょっと気になっている事がありまして。

「あの本」の内容が本当なのか、この目で確かめたいんですよ。


『ああ・・自衛隊が実は、予算をまともに付けられずに、貧乏な任務を強いられているっていうヤツだよね。』


 小笠原理恵「自衛隊員は基地のトイレットペーパーを〈自腹〉で買う」(扶桑社新書)

 ↑この内容について確かめるべく・・潜入ミッションを開始します。


『!?自衛隊の基地内で、何をやろうとしてるんだよっ!!』












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