第3話 初めてのスキルチェック! 1

「あいたたた……」

 ぺいっ、と言う効果音が出そうな感じで、私は中空から放り出された。

 イシュタルさん、せめて放り出すときは接地した状態で送ってください。


「まぁ、よくわかんないけど夢の異世界転移という事だし、精一杯楽しもう」

 私のいいところは無意味なポジティブハート! 男も女も度胸! 何でも試してみるのさ。

 ……でも、普通転移先って草原とか森林とか城下街とかじゃないですかねぇ。なんで見渡す限り砂漠なん?

 左を見ると砂丘。右を見ると砂丘。前には砂嵐。後ろは……なんか、キラキラした外皮のでっかいサソリ。


「イシュタルさん、ちょっと酷すぎない!?」

 でっかいサソリは少し距離があるものの、パッと見た感じ私より大きく見える。

 あぁ、なんかモンスター〇ンターでこんなヤツいたなぁ。幸い、まだ発見されてないらしい。きっとMAPにマーカーがあれば青印だろう。


「丸腰じゃ全く勝てそうにないし、逃げたいけど……」

 困った事に左も右も砂丘。姿は隠せそうだけど、その奥に何があるかは判らない。

 前方は論外。砂嵐なんて、そもそも入って大丈夫なものかも知らない。


「ええぃ、とりあえず右手の法則! 右に決めた!!」

 悩んでも結論がでないなら、まずは行動。しゃがみ込みつつ、こそこそと右手の砂丘を目指す。

 

 距離はそう遠くはないが気付かれたらどうしようかと、心臓が破裂しそうなほどドキドキしながら移動する。

 

 どうか、アクラ・ヴァ〇ムさんが気付きませんように……。


 努力の甲斐もあり、こそこそと全速力でしゃがみ移動してなんとか砂丘裏に到着。

 この姿勢でこんなに急いだのは人生初だわ。


「さて、砂丘の先には何があるかな?」

 ……うん。知ってた。砂漠だよね。うがぁぁぁぁっ。こんなん転移早々、気が狂うわ!! しかも、太陽(?)は見事に中天。死ぬほど暑い。

 砂漠の夜はめっちゃ冷えるっていうし、これ初日でもう一回イシュタルさんの所に送り返されない?


「いやいや、こういう時こそ冷静になるんだ。きっとイシュタルさんがここに送り出したって事はスキルとかで、ここでもやっていける様にしてくれているはず」

『新人バ美肉低コストVtuber 稀堕 紫愛』で、砂漠を乗り切れそうなワードは、無いけどなっ! とはいえ、貰ったものは確認しないと。


「ステータス(小声)」

 アクラ・ヴァ〇ムさんが気付かない様に小声でステータスとつぶやく。

 音量制限とかないよね?

 あ、開いた、よしよし。早速、異世界転移お楽しみのチート確認タイムだ~。


 <個人情報>⇒

 名前:新人バ美肉低コストVtuber 稀堕 紫愛(他者表示名 シア)

 種族:人間

 年齢:17歳

 レアリティ:UR(他者非表示項目)

 職業:冒険者ランクG

 賞罰:なし

 

 <基礎ステータス>⇒

 LV:1

 HP:15/15

 SP:10/10

 筋力:G

 体力:G

 技量:G

 敏捷:G

 知力:F

 運勢:F


 <装備>⇒

 アンダーフレーム赤縁メガネ:本体

 ブレザー(夏服):一般的な夏服

 ローファーパンプス:簡素なシューズ


 <所持スキル>⇒

 文字理解:全ての文字を読み解くことができる

 多言語発声:発言する言葉が相手が理解できる言語に自動変換される

 新人:職業 冒険者ランクGを得る

 バ美肉:精神性を維持したまま、女性体になる

 低コスト:スキル使用時のSP消費が半分になる

 Vtuber:仮想生命体。肉体が死亡状態または、本体が喪失した場合、リスポーン地点で再度復活する。経験値等は引き継ぐ。

 稀:レアリティがURとなる

 堕:任意に種族 堕天使に変化できる

 紫:毒属性魔法適正を得る

 愛:その戦闘中、一定時間『気合』『加速』『幸運』『熱血』『必中』『閃き』『努力』を得る。消費SP60。


「項目が多い!」

 ひたすら項目が羅列されたステータス画面を注視する。

 ……目が疲れるけど、しっかり確認しないとなぁ。 

 異世界転移では、なんかあってからでは遅いのだ(WEB小説知識)。


 まずは<個人情報>


 名前。これは、まぁ仕方ない。

 イシュタルさんも『新人バ美肉低コストVtuber 稀堕 紫愛』に可能性を感じるって言ってたし。でも、(他者表示名 シア)ってなんぞ?

 『名』が力を持つって言ってたから、イシュタルさんがバレない様にしといてくれたんだろうか? とりあえず、なんかあった時には、『シア』で名乗る様にしよう。

 

 種族:人間も問題ない。むしろ人間じゃなかったらどうしろと、って感じだ。

 いや、その後のスキル堕で変化できるみたいだけど。

 

 年齢:17歳。ここも稀堕 紫愛の年齢に準拠してくれてる。

 イシュタルさん、下調べしてくれたのね。感激。

 ところで、この世界アスタルテの17歳ってもう成人扱いなんだろうか? 行き遅れとかいわれないよね? ちょっと心配。

 

 で、レアリティ:UR(他者非表示項目)。

 これは、スキル稀の効果でURになってるっぽいんだけど、(他者非表示項目)って事は、それ以外の項目は他者に見えるって事だよね、きっと。

 

 職業:冒険者ランクG。これもレアリティと同じくスキル新人の効果かな。

 

 賞罰:なし。これは、自動更新システムなんだろうか? まぁ、捕まる様な事はしなければ問題ないだろう、多分。


 次が<基礎ステータス>


 比較対象もいないのでLV的に高いのか低いのか分からないけど、冒険者ランクGが新人って事を考えると、Gが最低値なんだろう。

 うわっ…私のステータス低すぎ…? 知らんけど。


 で、問題児その1<装備>


 ブレザーとローファーはいい。が、メガネが本体ってなんじゃぁ!!

 いや、メガネキャラの宿命としてメガネが本体って言われるよ!? でも、異世界転移してまで、わざわざ本体指定しなくたっていいじゃん!! しかもこれ、メガネに本体以外の能力無いじゃん!! その後のスキルとのコンボで弱点増えてるだけに思えるけどぉぉぉっ!


 <所持スキル>は結構多いけど、ちゃんと確認していくか……。

 つい反射的に目頭のあたりをもみもみしてしまう。


 文字理解&多言語発声

 これはイシュタルさんがくれたチート能力だろう。ありがたい。


 新人

 冒険者ランクGの職業を得るスキルらしいけど、このスキル、冒険者ランクが上がったら成長するのかな?


 バ美肉

 そうだね。女性体だね。……扱いに困る。


 低コスト&Vtuber

 え、これ、強くない? いや、両方ぶっ壊れスキルだと思うんけど。

 Vtuberのリスポーン地点が何なのかよくわからないけど、とりあえず死んでも蘇生できるって事だよね。しかも、経験値引継ぎで。

 これは、SP使いまくって死に戻りとか、結構無茶しても大丈夫なヤツかも。

 ただ、最大の問題は『本体を喪失した場合』の文言。

 本体って、メガネの事だよね……。喪失がどこまでの範疇かによっては凄い扱い辛くなりそう。


 稀

 レアリティをURにしてくれる効果。ゲームによってはURが最終レアなのもあるし、もしかして私、将来性バツグン?

 でも、その分コストが嵩んでパーティ組めないとかはないよね?ないと信じたい。


 堕

 多分これ、人前でみせちゃダメなやつぅぅぅぅぅ! うっかり見つかると大変な事になりそうなので、なるべく使用は封印した方が良さそう。

 堕天使が一杯いる世界観ならバリバリ使うけど、そんな訳ないよなぁ。


 紫

 色イメージから毒魔法かぁ。地味だけど有効なのかな?

 対人には良さそうだけど、解毒魔法とかもあるかもしれないし、過信は禁物っと。


 問題児その2。愛

 なんで! ここだけ!! スパ〇ボ!!?

 効果が強いのは分かるけど消費重すぎて、全然使えませんけどぉぉぉぉぉっ!!

 LVアップでSPが上がると思うんだけど、いくつ伸びるかによっては死にスキルになりそう。まぁ、保留。最悪ないと思えば大丈夫(自己暗示)。


 ステータスの各項目には右矢印が出てて、更に説明が読めそうなんだけど、アクラ・ヴァ〇ムさんが怖いので、後回しにしてさっさと移動しよう。


 しゃがみ姿勢はツライが、若いボディはそれに耐えて砂漠を突き進む。

 こそこそ移動する事、約1時間。しゃがみ姿勢のまま移動し続け、なんとか次の目標物が見えてきた。

 城壁もあるし、遠くには城っぽいものも見えるから、荒廃した廃墟都市って感じかな。まぁ、見えただけで距離はまだあるんだけど。


「アクラ・ヴァ〇ムさんから距離も取れただろうし、城壁の中で一休みしようか」

 しゃがみ姿勢を解除し、歩く事さらに2時間。ようやく、廃墟都市の城壁にたどり着いた。

 都市内部はかなりの広さがあり、建物だったと思われる瓦礫の山が大量にあった。 残念ながら瓦礫をどかせてもみても、食料品は見当たらなかったが。それに、あったとしても食べれるかどうかは疑問か。 

 それでも人心地付ける場所というのはありがたいものだ。


「さて、日が落ちるまでもう少し時間はありそうだけど、どうしようかな」

 廃墟に到着したものの、状況としては良いとは言えない。

 大きなサソリから逃げてきただけだから当然ではある。


「んー、スキルVtuberがあっても、お腹は減るのか」

 仮想生命体という割には腹が減る、このスキルも万能じゃないなぁ。このままだと、空腹でスキルVtuberのお世話になってしまいそうだ。

 無駄と思いつつも一縷の望みをかけて瓦礫をかき分けながら再度食料を探すが、やはり見つかるのは埃の塊だけであった。無念。


「うーん、流石にノーヒントで砂漠にポイ捨てはなかなかキツイぞい」

 イシュタルさんに悪態を吐きつつも、瓦礫を片付ける作業にも飽きてきたので、ステータス画面を再度開く事にした。


「さっきはツッコミを入れるだけで精いっぱいだったからなぁ。

 なんかヒントがないか探してみるか」

 気になっているのはステータス画面に存在する右矢印だ。

 ⇒があったのは<個人情報><基礎ステータス><装備><所持スキル>の欄。

 恐らく内容の詳細とかが見れるのだと思うのだが、そこに思わぬヒントがあったりするかもしれない。

 まずは<個人情報>の欄の⇒をタッチする。そこには案の定、各種項目の詳細説明が表示されていた。ありがたい事に、イシュタルさんのコメント付きで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る