【9】

「よーしっ、これで大丈夫だろ」

「ちゃんと、お祈りしたの?」

「当たり前だろっ、今日のマラソン大会、絶対に自分が一番になれますように、一等賞の金メダルを獲れますようにって祈ったよ。昨日と違って、今度はちゃんとお賽銭も入れたんだ。神様も聞き入れてくれたはずだっ」

「ふふ、昨日はケチな神様って言って馬鹿にしてたのにね」

「うるさいな。ともかく、これでお祈りは終わりっ。ほら、さっさと朝練しようぜ」

「分かったよ。でも、どれくらいやるの?」

「長いから、下に行って一往復するくらいでいいだろ」

「それくらいで朝練になるのかなあ」

「なるよっ、ほら、さっさと下りようぜ」

「マラソン大会の為に、こんなことしてるのって、僕たちくらいなんじゃない?」

「……そういえば、歩。ここに来ること、誰にも言ってないよな?」

「うん。言われた通りに、誰にも言わなかったよ。母さんにも、おばあちゃんにも。バレたら怒られちゃうし」

「そっか」

「あっ、そういえばさ。僕ね、昨日、おばあちゃんに訊いてみたんだよ。ここのこと。そしたらね、なんか、元々は父さんの方の家系がここを代々管理してたらしくてね、神様を祀ってた一族だから、かみ――」

「……歩」

「―――え」

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