第22話 帝国の陰謀

数日後、アムリオ領に戻ってきた。アレクシスはバルカニア帝国の真の狙いに気づいた今、急速に状況が緊迫していくことを実感していた。ガブリエルがもたらした情報によれば、帝国が魔法技術を利用して兵器を開発し、周辺国を圧倒しようとしている可能性が高い。表向きの友好関係の裏には、領地侵略の計画が進んでいるのだ。


アレクシスは、父レオポルドが外交のため不在である今、自らがこの危機にどう対処するべきかを決断しなければならなかった。彼は、兄カイルとリリア、そしてガブリエルを再び集め、緊急の会議を開くことにした。


「我々は、バルカニア帝国の動きを決して侮ることはできない。今後、帝国との外交を続けるか、それとも王国と協力して防衛策を強化するか、選択を迫られている。」アレクシスは厳しい表情で皆に語りかけた。


カイルは深く頷きながら答えた。「帝国が本気で軍事行動を起こす可能性があるなら、早急に防衛準備を進める必要があるだろう。兄としても、領地を守るために準備を怠るわけにはいかない。だが、帝国との関係をすぐに断ち切るのは危険だ。彼らが何を企んでいるのか、もっと情報を集めるべきだと思う。」


リリアも慎重に意見を述べた。「確かに、帝国は我々の魔法技術に大きな関心を寄せている。彼らがどの程度我々を脅威と見ているのかを見極めるためにも、もう少し時間をかけて彼らの動きを探る必要があります。」


ガブリエルは冷静に言葉を続けた。「帝国の中でも一枚岩ではないはずです。内部には派閥争いや利害対立も存在しているでしょう。彼らの動向を詳しく分析することで、我々に有利な手段が見つかるかもしれません。」


アレクシスはしばらく黙って考え込んだ後、皆に視線を向けた。「確かに、今すぐ対立するのは得策ではない。しかし、備えを怠るわけにもいかない。帝国の意図を探りつつ、領地の防衛を強化する。そして、必要があれば王国に援軍を求める準備も進めておこう。」


**


数日後、アレクシスは王都ルーヴァスへと急ぎ、王国の主要な貴族や軍上層部と会談することに決めた。アルステア王国がこの脅威に対処するための協力を求めると同時に、アムリオ領の立場を明確にする必要があった。


王都ルーヴァスに到着したアレクシスは、まず国王ヴァルターと面会する機会を得た。国王ヴァルターは、バルカニア帝国の動向には強い懸念を抱いていた。


「アレクシスよ、君の領地が王国にとって重要な拠点となっていることは疑いない。しかし、帝国との関係がこれほど緊張している状況で、君自身がどう対応するのか、私は非常に気になっている。君の父、レオポルドの考えも重要だが、今は君が前に出て決断を下す時だ。」


アレクシスは静かに頷き、慎重に言葉を選んで答えた。「陛下、我々はバルカニア帝国の意図を完全には掴んでいませんが、兵器技術の開発を進めているという情報が入っています。我が領地の魔法技術が彼らの関心を引いていることも事実です。しかし、我々はあくまで王国の一員として行動し、王国全体の利益を最優先にしています。」


国王ヴァルターはアレクシスの言葉に満足そうに頷き、「それでよい。君の判断は正しい。帝国に対する備えを怠らず、同時に慎重に彼らの動きを見守るべきだ。王国としても、君を全面的に支援しよう。」と答えた。


**


王都での会合を終えたアレクシスは、再びアムリオ領へと戻った。彼が戻ると、兄カイルとガブリエルは既に防衛策の強化を進めており、領内の守備体制は着実に整いつつあった。彼らは各所に見張りを立て、帝国からの不意の襲撃に備えていた。


一方で、アレクシスはさらなる策を考えていた。それは、バルカニア帝国に対する「反撃」の準備だった。彼らが本当に軍事力を使って攻撃を仕掛けてくる前に、帝国内の弱点を見つけ出し、逆に攻撃する機会を狙う計画だ。


「もし彼らが魔法兵器を開発しているのなら、その技術の源を叩く必要がある。」アレクシスは決意を込めてつぶやいた。「我々は、ただ守るだけではなく、攻めることも考えなければならない。つまり、我々もアムリオ産の魔法兵器を対抗して作るもひとつの手だ。」


こうして、アレクシスたちは帝国の陰謀を暴くため、さらに動き出すことになった。戦いは、まだ始まったばかりである。

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