第7話 鉄道建設編・後編

 あれから一年経った。

 鉄道で運用する機関車が到着した。

 しかし、この機関車がなかなかの曲者だったのだ。

 まず、車軸が軽すぎて空転するらしい。

 私は鉄道についてはあまり詳しくないのだが、どうも空転せずに車両を運用するには、それなりに車体の重量が必要らしいのだが、

この機関車は、高速性を重視しすぎた為に、過剰に軽量化してしまったようで、まあこの有様である。

 しかも、車体が軽いということは、牽引力も強くないらしい。

 せいぜい客車を6両引っ張るのがやっとである。

 

 ・・・なんだよ!ふざけるなよ!詐欺じゃないか!

 この機関車のカタログには、


 客車10両を引っ張って時速180ヘーメル(時速90㎞)の高性能

 って書いてあったではないか!


 文字通りの役に立たない機関車である。


 役に立つ機関車しかいらないと言ったはずだ!

 

 どうしたものか、この機関車を5両も発注してしまったのだ。

 今更キャンセルもできないし、どうしよう。

 しかし、これよりもマシな機関車を買おう・・・となると、なんと2倍以上の費用が掛かるのだ。

 さすがにそれはできないな。

 

 まぁ、なんとかなるでしょ。

 この鉄道は平坦な区間が多いし、そこまでの物資や客を乗せるはずはないし。

 ということで、どんなク○みたいな機関車でも無いよりはマシということで、そのままにすることにした。


 この決断が吉と出るか凶と出るかは後になってからじゃないと分からないが、なんか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。


             ~2年後~


 ついに開業の日になった。

 開業初運転には国王陛下も乗車する。

 絶対に失敗できない。

 どうにか足りない牽引力を補う為に、機関車を2両繋げて客車を引っ張る事にした。(重連というらしい)これなら大丈夫だろう。

 

 開業記念式典が終わり、式典の参加者が列車に乗り込んだ。


 その10分後、発射ベルが鳴り、列車が出発した。

 凄まじいドラフト音とともに列車が動き出す。

 黒い煙りを濛々と煙突から吐きだす。

 やはり動輪は盛大な空転が起こるが、順調に馬力のごり押しで前に進んでいく。好調な滑りだしとでも言おうか。

 そして、やはり重連にして正解だった。

 一両だけでは客車を引っ張り切れなかっただろう。

 首都のエッセンブルクまでの360ヘーメルを各駅停車で6時間。

 ようやく首都に到着した。

 正直ヒヤヒヤした。

 こうして、鉄道は開業を迎えた。

 ここからが勝負だ。


 そうして、鉄道は開業から一年が経った。しかし、ある問題を抱えていた。

 想像以上に輸送量が多いのである。

 客車は毎日労働者で満員。

 貨車は操車場に輸送の順番待ちで列を為していて、とてもじゃないが、輸送力が足りているとは言い難い。

 

 だが、鉄道運営は想像以上に順調で、開業から一年で既に8万ホルンの稼ぎを出している。

 ちなみに想定されていた初年度の稼ぎは4万ホルンだったので、想定の2倍以上の稼ぎである。

 開業から一年しか経っていないが、この鉄道はもう既にグランセンブルグの欠かせない産業の一つになっている。

 

 この予想以上の経済効果もあり、輸送力増強の為の新しい機関車の配備について、議会はすぐに承認してくれた。

 また、この鉄道は予算内でなんとか鉄道を造った事もあるだろう。もし、この鉄道建設で予算オーバーなんてしたら、ここまでの稼ぎを出しても、新たな追加予算は認められなかっただろう。

 

 こうして、数々の困難を乗り越えて鉄道は完成した。

 シュライアーさんとは、今度は西部で鉄道建設があるらしいので、彼とはここで一旦お別れだ。

  

 さて、こんな大仕事も一段落ついたし、私は身分制議会の選挙の準備でもしますかね。本当にやるべきなのはこっちなんだし。


                       鉄道建設編 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る