鉄道建設編・中編
作業が進んで行くうちに、問題が発生した。
レールと枕木を留める為の釘が足りないのだ。
地方警察と協力して調べて行くうちにあることが分かった。
行方不明となっていたこの資材が大手鉄鋼業企業ハリファックス・シュタールでくず鉄として販売されていたことだった。
しかし、この会社は犯罪を犯してはいなかった。
この資材は、下請けの業者からくず鉄として売買されたものだったらしい。
もちろんの事、合法の業者から正規ルートで仕入れた物なので、違法ではない。
さらに調べてみると、その下請け企業にも下請け企業がいて、その業者もまたさらに下請けの業者から仕入れた事が分かった。
並べてみるとこうである
ハリファックス・シュタール
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一次下請け
⬇
二次下請け
⬇
三次下請け
さらに調べてみると、三次下請け業者は、さらに下請けの業者から仕入れようだ。
しかし、この三次下請けの下請け、いわゆる四次下請け業者が、なんとペーパーカンパニーだったのだ。
ここまでたどり着くのに3ヶ月かかった。
結局、警察が四次下請け業者の社長を横領罪と公文書偽造罪で逮捕、この業者は一網打尽になった。
しかし、この多重下請けシステムはどうにかならんのかな?
下請けがあまりにも多重すぎると、我々に監視が及びにくくなるし、警察の捜査に時間がかかる。
今回は、どの企業もすんなり捜査に応じてくれたから、3ヶ月で捜査が終わったものの、5年前にオーバーライヒで起こった国際横領事件の捜査はいまだに続いている。
多重下請けシステムが全て悪いとは言わない。
悪徳業者や違法業者が悪いのは分かっている。
私は多重下請けをせざるを得ない理由があるのは分かっているつもりだ。
実際、企業がプロジェクトに沿って事業を展開する際に、ひとつのプロジェクトに充てる開発人員を自社従業員だけで賄おうと思うと、莫大なコストがかかるのだ。
しかもプロジェクト終了後、雇った人員リソースにもムダが出てしまう。
しかし、多重下請けは害が伴うのは明らかだ。
今回の事件なんてまさにそうだ。
身分制議会の議員になったら、多重下請けを規制できるように法改正を提案してみよう。
だがうれしいこともあった。
なんとハリファックス・シュタールはこの資材を無償で返還してくれたのだ。なんてうれしいことだ。戻って来ないことなんてざらにあるのに。
まあ、工事に遅れが生じなくて済んだので、 よかったと思うが。
一難去ってまた一難、すぐにに問題が発生した。
今度はベアへンメル市での鉄道の用地売買反対のデモだ。
今度はデモか、厄介だな。
しかもこのデモはなかなか収まらなかった。
いやまあ当然といえば当然か。
だってベアへンメル市は通過するだけだもの。
厄介なことにベアヘンメル市はそこそこ規模が大きい市で、人口はおよそ61万人。
工業拠点も多くあり、一年の製品生産総額は21万ホルンだ。
(1ホルン=およそ1260円)
驚く事にこの都市は、中核都市ではないのだ。
国内最弱の中核都市であるホーウェンブルグの一年当たりの生産生産総額が19万ホルンである。
しかも、生産力ではベアへンメルと比べて劣っているホーウェンブルグは、中核都市だからという理由だけで、鉄道の駅を造ることになったのだ。
確かにベアへンメル市には同情してしまう。
私が首相になったら是非とも中核都市に指定しよう。
ちなみに、鉄道計画をしたのは我々だが、我々じゃない。
私とシュライアーさんが造った株式会社は半官半民。
実は、株の半分は国が保有してるし、計画で停車する駅を決めたのも国なのだ。
中核都市じゃないからって理由だけでベアへンメル市に駅を造らない事を決めたのは国なのだ。
全く、国ってのは本当に厄介な物言う株主だよ。
なので、我々に文句を言うのはとんだお門違いである。
しかし、暴動も起こさないので、おおっぴらに鎮圧・排除することもできない。これ以上ヘイトがこちらに向いたら困るのだ。
どうしたものか・・・しかし答えは一つしかなかった。
こうなったらどうしようもない。
とにかく熱意を持って買収に臨むだけだ。
・もう来るなと行ってもお願いしに行く。
・何度も丁寧に説明する。
・強い態度に出ない。
しかし、こんなことでは収まらなかったので、やはり仕方なく公共施設の整備と予算拡充、そして、住宅と、買収対象者の生活が安定するまでの生活の保障を、国と領地と株式会社の三者が共同ですることを約束することになり、これでデモは解散となった。
しかし、予算があまりにもカツカツだ。
このデモのせいで予備予算はもうほとんど残ってないし、事件の対応も大変だし。
ほんとにもうこれ以上何事もなければいいんだけども。
不安を抱えながら、私は眠りに就いた。
鉄道完成まであと3年・・・
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