第五話 鉄道建設編・前編

 ~大陸へ向かう船の上~

 

 シュライアーさん、昨日、ホテルのフロントで、鉄道事業の株式会社をしているとおっしゃいましたよね。


 実は我が領地には鉄道が通っていないのです。そこで、提案です。鉄道を我が領地に引きませんか?

 

 突然ですね、実は私も、コーストランドでの鉄道事業が頭打ちでして、母国ハイゼニアで鉄道事業をやりたいと思い、出資者を探しているところなんです。

 しかし、鉄道事業は莫大なカネがかかりますよ?


 もちろん、存じあげております。

 資金なら出せます。


 それならば、資金面での心配はありませんね。

 ルドルフさん、"我が領地"とおっしゃいましたが、具体的に、どこの地方の領域になるのでしょうか?


 ジェーンハイゼン王国南部のグランセンブルク選公爵領です。

 母国に帰ったら、ぜひうちにいらしてください!シュライアーさん、ぜひ具体的な相談をさせてください! 


 必ず伺いますよ。-シュライアーがにこやかに言う。

 

 -グランセンブルク選公爵領か、そこでは錫と銅が取れるし、牧畜も盛んだ。それにそこそこ面積も広く、それでいて、ほどほどに人口の多い地域だ。

 これは、ハイゼニアでの鉄道事業の足掛かりになるかもしれないな。 いよいよ乗り込むか!ハイゼニアに!


 2ヶ月後、グランセンブルク選公爵領、領主官邸で、地元企業の社長や資本家、領議会の議員なども招かれ、説明会が開かれた。


 この図をご覧ください。現在のハイゼニア鉄道の総延長はおよそ3500km、しかし、ジェーンハイゼン南部は殆ど鉄道空白地帯です。

 首都のエッセンブルクと鉄道が結ばれれば便利になりますよ。


 説明会の参加者がざわめく


 あちこちから物が集まれば、商品の売値の変動も競争も激しくなるぞ!

 

そうだな、地元の生産者が苦しくなるかもしれない。


 でも、原材料の仕入れには有利だ。

 鉄道で大量に原材料が輸送できれば原価が安くすませられる。


 我々農家も生産物が速く大量に運べるならば嬉しい限りです。


  工事が始まれば、失業者を雇う事もできるぞ。


  しかし、ルドルフ公爵殿下、資金はどうするんですか?


 株式会社を設立するつもりです。


 しかし、まとまった資本金がいるでしょう?


問題ありません、我々グランセンブルク家の銅鉱山や、錫鉱山を担保にすれば、銀行はいくらでも金を出します。


 しかし、前領主であるお父さまは反対しなかったのですか?

 問題ありません、なぜならこれは父の提案だからです。


 みなさんありがとう。

 私シュライアー、鉄道事業者の端くれとして、皆様に損はさせません。


 これで正式に契約決定ですね! 


 1年後、無事に議会と王陛下からの許可が下りたため、ついに鉄道建設工事が始まった。


 通常、鉄道建設ほどの大きな事業は議会からの許可が下りるのには2年から5年という長い期間がかかる。

 ただ、我々は運良く前年の11月にジェーンハイゼン王国は近代化政策の一環として領域同士の関税と通行税を撤廃した。

 

 これにより、領地と領地をまたぐ事業がやりやすくなったので、この鉄道建設事業の許可がたったの1年という速さで下りたのである。


 ~工事現場で~

 

それにしても、技師の方に外国の方が多いですが、どうしてですかシュライアーさん?


 ハイゼニア人よりも腕が確かなんですよ。

 私はこの国も技師の育成に力を入れれば、すぐに外国の技師とも張り合えるレベルになると思っています。


 次の事業は技師の育成をやってみようかなと。


 さすがシュライアーさんだ、もう次の事業の見通しも立てているんですね!


 こうして、シュライアーさんを中心に鉄道建設事業が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る