第二話 隣国と決意
私は大学へ行くため駅に向かった。
駅前の売店でいつもの新聞を買う
おばさん!これ代金とチップです!
その新聞の一面には驚くべき事が書いてあった。
「ハイゼーヌ共和国の第一統領であるブラウン・フィリップが国王に即位すると宣言した。4年前から王制復古をしようとしていたが、国民議会による反発で断念していた。今回の王制復古は議会の声を押しきった形での物になる。これにより光歴1829年の8月王制以来20年ぶりの王制復古となる。」
嫌な予感がする。ブラウン・フィリップは人気集めの為に植民地拡大や他国の戦争への介入などを繰り返している指導者だ。
しかもあの侵略者(いや、ハイゼーヌからしたら救国の英雄か?)レオポルト・フィリップの甥である。しかも奴は尊敬する人物として公然とレオポルト・フィリップの名を挙げている。
レオポルト・フィリップは40年前、革命戦争で我が祖国を分裂させた張本人である。いつか我が国は再びハイゼーヌと戦争になるだろう。
奴がこの国に自由主義を植え付けたからこの国が以後60年に渡り分裂した国家になってしまったのだ(連邦になってしまった)。
奴等ハイゼーヌ人が再び攻めて来るならば、私も武器を取って戦おう。
そういえば、私はこの国の首相になる!そう心に決めたのは9歳の時だったな。
~ ~ ~ ~ ~ ~
14年前
ルドルフ、これが我がグランセンブルク家が護っていかなければならない領地だよ。
父と馬に跨がり、丘から街を見下ろす
遥か先まで広がる田園風景。
洗練された美しい町並み
たなびく煙突の白い煙
こんなに綺麗に街を見下ろせる所があるなんて知らなかった。
我が家には領民を正しく導く義務があるんだ。
この景色をしっかりと覚えておきなさい。
はい!父さん
家に帰ると、裏山にある傷付いた大木を見せてくれた。
父さん、この木の傷は何の傷なの?
この大木の傷はハイゼーヌ軍の銃剣や弾丸の跡だよ。
ハイゼーヌ軍がここまで来たの?
そうだ。そして、ハイゼーヌだけじゃない、ジェーンハイゼン公国の周りにはたくさんの強国があるんだ。
父はしゃがんで落ち葉の下を見せた。
思わず僕は驚いた。
「弾丸だ!」
ここだけじゃないぞ、ついて来い!
家の近くの畑に行くと、サーベルの鞘が刺さっていた。
これは?
我々ジェーンハイゼン公国の兵士の遺品だ。
きっとこの地を守るために勇敢に戦って散っていったんだ。
橋を越えて行くと、慰霊碑とたくさんのお墓があった。
父さん、これは?
40年前の革命戦争で亡くなった領民の慰霊碑だ。
その先に広がる墓地には、戦死したこの地出身の兵士が眠っている。
去年亡くなったおじいちゃんも指揮官として従軍したんだよ。
いいか?ジェーンハイゼンを強くすることが我が領地を守る事になるんだ。
だからお前はジェーンハイゼンの為になる大人になるんだ。
はい!お父さん!
この国の為に命を捧げられるような大人になります!
~ ~ ~ ~ ~ ~
今でも父に連れられて街に出た事を思い出す。
父は、「この国の首相になって、ハイゼニア連邦を統一したい!」
という私の夢を応援してくれた。
父は、「領地は私がなんとかするから、気にせず夢を目指しなさい」と背中を押してくれた。
そして、大学の勉強を優先させてくれた。
おかげで私は名門大学の「ジェーンハイゼン公国邦立大学」の政治総合科に合格できた。
それもこれも父のおかげだ。
合格の知らせを父にしたときは、自分の事のように喜んでくれた。自慢の息子だと褒めてくれた。
私は父のような人になりたい。今も一番尊敬している人は父である。
田舎のユンカーの子だが、父のおかげで名門大学に合格できた。
政治家になっても舐められたりはしないだろう。(卒業できればの話しだが)
それに私は講義をダルいだのなんだの言っているが成績は悪い訳ではなく、むしろテストはいつも9割以上取る位には勉強はできる方なのだ。
だが、とにかく今は大学生活だ。私のキャリアの土台は大学にかかっているのだ。
おっといけない!私は何をしていたんだ!
汽車を一本乗り逃してしまった。
まあいいか、次の汽車までは10分、十分に大学に間に合う。
新聞の連続小説でも読んで待つか...
今日も私の退屈な一日が始まる。
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