リズモーニ王国 サマニア村
第6話 村の案内
熊獣人のアルクさんとの生活を始めて5日目。
食事もしっかり食べられるようになり、顔色も良くなってきたという事で、村の見学をさせてもらうことになった。
家の周りには木が沢山生えていたので、森の中だと思っていたんだけど、村の中で木を残しているのはアルクさん宅の周辺の他は 一部だそうで、中心部分は開拓しているのだそうだ。
アルクさんの後ろをついて歩いてたんだけど、背の高さ というか 足の長さが違い過ぎ、小走りでも大変だった。
気付いたアルクさんによって、現在抱っこをされております。
森と畑があり、家も沢山あるけど密集はしていない。
長閑な雰囲気が漂うココは【サマニア村】というらしい。
村の中央には川が流れているから 井戸は無いようだ。
洗濯も食器洗いもトイレの後も、生活魔法の【クリーン】で綺麗にするため、生活排水で川が汚染されるという危険はない。
井戸のかわりに(?)村の中心には大きな木があり、ご婦人たちが集まり井戸端会議が行われている最中だった。
兎に猫に犬、人の見た目に動物の耳が付いているのは、ケモラーにとっては堪らない楽園であろう。
会議中だったご婦人たちが たちまちアルクさんの周囲を取り囲み、私にアレコレ話しかけてくる。
「あら~、アルクさんったら、どこでこんな可愛らしい子を拾ってきたの?」
「あらあら、この可愛らしい子ったら、人族の子供じゃない?愛らしいわぁ。」
耳と尻尾があるだけで、どこの世界でもご婦人パワーが凄いのは変わらないらしい。
「あぁ、ちょっと待て。ヴィオが驚いとるじゃろうが。」
あまりの勢いに戸惑っていれば、アルクさんが止めてくれた。
初日にヴィオと呼んで欲しいとお願いした。
バイオレットは長すぎるし、この村の人たちは3文字くらいの名前が多いらしいから。
ご婦人たちも私の様子を見て「あらあら、ごめんなさいね」と撫でてくれるので、悪気はないのだろう。田舎は娯楽が少ないというし、見たことが無い小さな子供が現れたらそうなっても仕方がない。
「この子はヴィオ。5歳の人族じゃ。
川で溺れているところを見つけて助けたんじゃ。両親は死んでしもうて身寄りがない。じゃから儂の娘として育てようと思っておる。」
アルクさんの発表に、ご婦人だけではなく 周囲で聞いていた大人たちも驚いたように足を止めた。
「あらあら、アルクさんの元気な顔は久しぶりに見たわ。いいんじゃないの?」
「えぇ、そうねぇ。アルクは子育ても上手だし、冒険者としての腕もあるもの。小さなお嬢さんを護るのも安心よね。」
恰幅の良いご婦人が アルクさんの発表に頷けば、周りの女性陣が肯定。
どうやらアルクさんは奥さんを無くした後、立て続けに息子さんたちが旅立ち、元気をなくして家に引きこもりがちになっていたらしい。
「お、おい。でも嫁さんがいないんじゃ子供が寂しがるんじゃないのか?女親になれる奴がいた方がいいんじゃないか?」
「何言ってんのよ。男親がいても役に立たない家もあるんだから、女親がいなくても大丈夫な家もあるわよ。大体ヴィオちゃんはお乳が必要な年じゃないもの。
村のあたしたち全員がヴィオちゃんの母親の役目をしてあげりゃいいじゃないか。」
ガタイの良いおじさんが心配して発言するものの、ご婦人方によって総口撃を受けている。
ここまで私も アルクさんも全く発言する機会は頂けていない。
凄いよご婦人パワー。
「あら、それは良い考えね。私もこんな可愛い娘が欲しかったもの。男の子はあんまり凝った靴を履きたがらないし、つまらないものよ。
ヴィオちゃん、私はミリーナよ。靴を作ってるの。後で足のサイズを測らせて頂戴。可愛い靴を作ってあげる。」
「ミリーナさん、素早いわ。
私はリリウムよ。お洋服を作ってるの。アルクさんの家には男物しかなかったでしょう?後で可愛いお洋服を沢山用意しておくからお店にいらっしゃい。」
白い兎のお姉さんと、ロシアンブルーみたいな猫のお姉さんから、お洋服と靴を見せてあげるとお誘いを頂いた。アルクさんもそれが目的だったようで、この後 店に行くと約束をしていた。
◆◇◆◇◆◇
村長のフクロウ獣人 ハロルドさんにご挨拶をしに行くのが 今日一番の目的で、訪れた場所は川にかかる橋を渡った先にある 大きな邸宅……ではなく、村の他の店より 少し大きいだけのお店だった。そう、お店。
「フォッフォッフォ、私が村長をしておるハロルドであるぞ。
村長と言っても このような小さな村であるから、皆で協力して生活をしておる。
私も薬師として、この村で薬局を経営しておるのだ。なので、村長と呼ぶ者は殆どおらぬぞ。其方もハロルドさんか店長と呼ぶと良い。」
フクロウだから その笑い方なのか、色々ツッコミたいところはあるけれど、とてもフレンドリー。村長と言えば村の取りまとめ役という名のもとに、あまり仕事をしているイメージはない。という物語が多いのに、普通に仕事をしているのが驚きだ。
まぁ、領主だって仕事をするんだから、村長だって仕事をしないと生きるのは大変だよね。
そんな感想を持ちつつ、村長に受け入れてもらえた事で 村を自由に歩くことが出来るようになった。
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