みなみのみやこ~つづき~

 「ついたぞ~!みなみのみやこに!」

 「いやあそれにしてもビルがたくさん」

 「でもぜんぜんひとけがないね」

 「そうだね~」

 ひらけた場所に装軌車をとめると、聞き覚えのある声がした。

 「おふたりさんついてたんですね」

 「飯澤さん、またあいましたね」

 「飯澤さんの気配がなかったけど、ついてきてたの?」

 「いえ、1時間くらい前に着きました。」

 「さすがジープだ。速いな」

 「飯澤さん、ここってひとけがないね。」

 「私が数ヶ月前に来たときには、まだ60人くらいは人が住んでたんですけど、どこへいったのやら」

 「最近まで人がいたのか」

 「明らかに廃墟な外見からは想像もつかないな。」

 「でしょう?実はこの都を作ったのは200年以上前の先人たちなんですよ。」

 「じゃあ住んでた人たちは?」

 「おそらくその末裔か、この都に移り住んできた人たちでしょうね。」

 「すごいな、そんなに昔から建ってるんだ」

 「でも住みたいとはおもわない。」

 「ぼくも」

 「なんで移り住んできたんだろう。」

 「インフラが整ってて便利だったからですかね?」

 「水道とかも通ってたの?」

 「今も通ってますよ。ただ、今は浄水場が壊れてるので、汚い水しか出てきませんけどね。」

 「電気は通ってるの?」

 「電気は通ってますよ。夜は、人がほとんどいない都市が、一気に街灯の明かりに包まれるので、それは綺麗です。是非とも見てほしいです。」

 「この都市ってなんでもあるんだね」

 「じゃあ給油施設ってあるかな?」

 「中央にある塔の近くに一基ありますね。」

 「ところで、飯澤さんは、なんでこの都市のことをこんなに知ってるの?」

 「先人たちが地図を残してくれたからですよ。」

 「地図?すごい!見せて!」

 「大事に扱ってくださいね」

 「ぜんぜんよめない」

 「地図は読み方を知らなければ、そりゃ読めませんよ。」

 「ねえ、ユータ、闇市にいきたい。」

 「そうだね、おなかもすいたし」

 「飯澤さん、闇市まで案内していただけませんか?」

 「もちろん」

 二人は装軌車に乗ろうとする

 「乗り物は要りませんよ、徒歩で行ける距離にあるんです。」

 「ここから近いんですね。」

 「足元を見てください。」

 「え?」

 「ハッチがある!」

 「これを開けます。」

 「わあ、穴だぁ」

 「はしごを降りるの?」

 「そうです。」

 「はしごを降りた先はもう闇市の入口です。」

 「なんかこわい」

 「先が暗いのがとくにこわいな。」

 「安心してください。こわくないです。」

 「安心できない。」

 おそるおそる二人ははしごを降りていく。

 降りた先には通路が広がっていた。

 「ここは?」

 「古い地下鉄の通路です。そこに階段があるでしょ?」

 「うん。」

 「そこを降りたらもう闇市です。」

 「ついに闇市か。」

 階段を降りた先には、驚くべき光景が広がっていた。

 「人がいる!」

 「たくさん人がいるね。」

 「店がたくさんある。」

 「闇市って、商店街みたいな感じなのか。」

 「商店街?」

 「店が並んだ街。」

 「そのまんまだね。」

 「なんでユータは知ってるの?」

 「本で読んだ。」

 「本ってすごいね。」

 「まあ、商店街がどんなものなのかはよくわからないけどね。」

 「闇市っていろんなものが売ってるんだね。」 

 「うん、本から食べ物まで、なんでも売ってるみたいだね。」

 「おなかすいたし、食べ物でも見ようか。」

 「飯澤さん、食べ物が売ってるところってどこですか?」

 「まっすぐ進んで、丁字になっている角を右ですよ」

 「わかりました。」

 

 ~時間は過ぎて~


 「いろいろ買ったね。」

 「シチュー、おいしかったね。」

 「本も買えてよかった。」

 「切らしてたマッチも買えたね。」

 「チーズを買えたのはうれしい。」

 「戦利品いっぱいだね!」

 「おふたりさん、買いたいものは買えましたか?」

 「はい!たくさん。」

 「それはよかった。」

 「えっと、闇市からでて、給油をしたいんですが。」

 「そこに、エレベーターがあるでしょ?」 

 「はい。」

 「それうごんですよ。」

 「え!?」

 「ほんとかなぁ」

 「乗ってみてください。」

 「うわぁ、ゴンドラが登ってる!」

 「ちょっとこわいな。」

 ガシャーン

 「着きましたね。」

 「エレベーターって便利だな。」

 「では、自分たちの車に戻りましょうか。」

 「飯澤さん、給油施設まで案内していただけませんか?」

 「もちろん。」

 「この壁沿いをまっすぐ。」

 「角があるけど曲がる?」

 「いや、どんどんまっすぐ。」

 「塔があるね。」

 「あれ?」

 「そう。それです。」

 「ホースはあるかな?」

 「ないや。」

 「直接入れちゃえ。」

 「ほいな」

 「ここらへん?」

 「もう少し、あと20cmくらい装軌車を前に動かして。」

 「ここらへん?」

 「そう、そこ!」

 「へ~い」

 「バルブ緩めていい?」

 「いいよー!」

 「ガソリン入れはじめるね!」

 トロトロトロ~

 「よし!ちゃんとはいった!」

 「おふたりさん、器用ですね。」

 

 ~数分後~

 「これで燃料も満タンだし、出発しますか。」

 「そうしよう。」

 「でもどこまで行こうか?」

 「真ん中の塔のてっぺんまで!」

 「登れるかな?」

 「真ん中の塔には、車が載せれる大きなエレベーターがあるので、行けますよ。」

 「飯澤さんも行く?」

 「私は北側の生態調査をしたいので、塔のてっぺんまではついていきますね。」

 「わーい!それじゃ出発だね!ユータ!」

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つぐないの終末記 user109331 @109331

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