第5話 退屈な授業

「で、この問題解ける人ー?」

算数の北口蓮美きたくちはすみ先生が、白いチョークで黒板に書かれた問題を指した。

「はい!答えは10です!」

中村が手を挙げて立ち上がり、問題に答えた。

俺はいつものように、シャーペンのノックボタンを押して遊んでいた。

授業なんか退屈だ。

「次の問題っ」

「先生、20です!」

また中村が答えた。

俺はそれと同時に、長く出したシャー芯を机につけて折った。

それをまたシャーペンに入れる。 

授業中はいつもこんな感じだ。

だいたい、問題を聞かれて手を挙げるのは一部の連中だけ。

俺は手を挙げることなんてめったにしないが。

「はあ」

俺はため息をついて机に突っ伏した。寝たい。

「じゃー、吉野くん!この問題解ける?」

げっ。よりによって強制かよ。

俺は立ち上がって応えた。

「わ、わかりません!」

そして座る。

教室は何故か笑いで溢れた。

まあ、こんなもんだ。

「くそー」

俺はまた机に突っ伏した。


###


昼休み。

俺はいつものように智也と遊んでいた。

背面黒板に書いた的に誰が一番早く、投げた消しゴムを当てられるかっていうゲームだ。

「よっ!」

俺が投げた消しゴムが的に命中した。

「ねえヨーちゃん、音楽の課題やった?」

突然背後から声がして、後ろを向いた。

ご用聞き係の音楽担当──桜葉苺さくらばいちごだった。

「げっ、桜葉じゃん!え、音楽の課題だって?やるわけないじゃん!」

リコーダーを吹けって課題だ。

やらない。というか、やりたくない。

やめる、やらないと宣言したのだから。

「やだね、やめるって言ったもん」

俺はキッパリと応えた。

「へえ、じゃあ音楽の成績下がってもいいの?」

うっ。それを言われると・・・。

だがやはり。

「いーや、やらん!」

「ヨーちゃん・・・w」

それを聞いて、智也が苦笑いしていた。

「先生に言っとこー!あっ、美月ちゃん!校庭で遊んでこよー!」

桜葉は中村の方へ走っていった。

「よし、次!誰が投げる?」

「はいはい、俺!」

智也が応えた。

今は夏で、外はセミがうるさいし暑い。

夏の昼休みはいつもみんなと教室で騒ぎまくるのが定番だ。

そういえば、11月には合唱コンクールがあるような。

どうかピアノ伴奏に選ばれませんように・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る