中村美月
第4話 中村美月
放課後の公園は、いつもより少し静かだった。その理由を考えながら、俺は智也と一緒に遊具の近くに座った。池のほとりには、カモたちが泳いでいて、のんびりとした風景が広がっている。だけど、俺の心の中には、昨日の出来事が引っかかっていた。
「しつこいけどさ、本当に楽器やめちゃうんだ?」
智也が突然聞いてきた。
「うん、やめるって決めたんだ。もう続けたくないから」
俺は言ったが、自信がなかった。実際には、やめることに対していくつかの迷いや不安があった。
「そっか。まあ、好きなことをやってるのが一番だもんな」
智也は言った。
その時、ふと視線を感じて振り向くと、中村がこちらを見ていた。彼女は少し戸惑いながらも、俺たちの方に近づいてきた。
「陽介くん、昨日のポスター見たよ。楽器上手いんでしょ?どうしてそんなことしたの?」
中村は緊張した感じだったが、少し心配そうな表情を浮かべていた。
「別に、どうってことないよ。ちょっとした冗談というか・・・」
俺は頭の中で必死になって言葉を探すが、上手く説明できなかった。
「でも、楽器やめるのは本気なの?」
彼女の視線が真剣で、思わず顔をそむけた。
「まあ、そうだよ。本当にやめるって決めたし」
俺はなぜ、こんなにも気にされるのか。
「でも、もうやりたくないんだ。だから、仕方ねえよ」
そう言ったものの、心の中では葛藤が続いていた。
「そ、そんなことないよ!好きなことをやめるのは、もったいないよ!」
中村は大きな声で言った。俺はその声にドキッとしてしまった。
「ほんとに、楽器をやめるのが正解なのか?」
俺は心の中でつぶやいた。
中村はその言葉を耳にして、少し緊張しながらも微笑みを浮かべた。
「きっと、陽介くんの中に答えがあるよ。自分の気持ちに正直に向き合ってみて」
俺は、そんな中村の言葉に悩まされ続けた。
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次の日。俺は教室の前で大きく息を吸った。
そして、ドアを開ける。
「good morning everyone!!」
「うお、なんで英語!?」
隣にいた智也がツッコミを入れてきた。
これでこそ、朝。
俺は、いつものように中村の隣の席に座った。
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