第2話 楽器やめました

次の日の朝、いつも通りの教室に入るとみんなが俺をちらちら見ている。昨日の朝の騒ぎのせいで、視線が刺さる。

まぁ、そうだよな。俺が楽器やめるって大声で叫んだんだから、当然だ。自己嫌悪が湧き上がってくるのを感じた。俺は自分の席に座った。

 中村は、俺の隣の席だった。

俺はクラスに馴染み始めた中村の顔を見ないように、自分の顔をそむけた。

すると、智也が話しかけてきた。

「なあ、ヨーちゃん。なんか楽しいことでもしようぜ!」

「おっ、いいねえ!なにする?」

智也はニヤリと笑った。

「廊下の掲示板に、『楽器やめました』っていうポスターでも貼ってみるか?」

「おお、さすが智也だな!」

俺は頷いた。


###


昼休み。

俺たちは、教材室から持ってきたどデカい紙にペンで大きく「楽器やめました」と書いていた。

「あっ、でもさあ、ヨーちゃん。本当に楽器やめちゃうのか?」

「・・・やめるよ、もう。 こんな話してないで、早く紙貼ってこようぜ!」

俺は紙を丸めて持つと、立ち上がった。そして先生の机の引き出しにある、画鋲を取りに行った。


廊下は、いつも通りガヤガヤと騒がしかった。

俺たちは、人の少ない掲示板の方へと向かった。

「さてと。貼るか!」

俺は、画鋲で掲示板に紙を貼り付けた。

「ふう。これでよし。」

俺は掲示板に貼った紙を見た。

「先生に、俺たちがやったってバレないといいな」

「あっ、でも俺たち、学年新聞係だから今月の新聞はこれにするか!」

新聞係っていうのは、毎月、掲示板に自分たちで作った新聞を貼るって係だ。

俺は、紙の右端に「学年新聞今月号」と書いて教室に戻った。

これでいいんだ。


5時間目の授業初め。担任が教室に戻ってきた。

「おい、誰だ掲示板にイタズラしたやつは!」

俺たちはびっくりした。

やばい。そう思った。

そのあと、俺たちは20分くらい怒られた。


下校中、俺と智也は放課後に、小さな池のあるいつもの公園に遊びに行くことを約束した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春交響曲 𝄢 〜ガキ大将とコミュ障少女〜 迷M _りみ @mei_m_rimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画