第3話 楽器やめました
次の日の朝、いつも通りの教室に入るとみんなが俺をちらちら見ている。昨日の朝の騒ぎのせいで、視線が刺さる。
まぁ、そうだよな。俺が楽器やめるって大声で叫んだんだから、当然だ。自己嫌悪が湧き上がってくるのを感じた。俺は自分の席に座った。
中村は、俺の隣の席だった。
俺はクラスに馴染み始めた中村の顔を見ないように、自分の顔をそむけた。
すると、智也が話しかけてきた。
「なあ、ヨーちゃん。なんか楽しいことでもしようぜ!」
「おっ、いいねえ!なにする?」
智也はニヤリと笑った。
「廊下の掲示板に、『楽器やめました』っていうポスターでも貼ってみるか?」
「おお、さすが智也だな!」
俺は頷いた。
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昼休み。
俺たちは、教材室から持ってきたどデカい紙にペンで大きく「楽器やめました」と書いていた。
「あっ、でもさあ、ヨーちゃん。本当に楽器やめちゃうのか?」
「・・・やめるよ、もう。 こんな話してないで、早く紙貼ってこようぜ!」
俺は紙を丸めて持つと、立ち上がった。そして先生の机の引き出しにある、画鋲を取りに行った。
廊下は、いつも通りガヤガヤと騒がしかった。
俺たちは、人の少ない掲示板の方へと向かった。
「さてと。貼るか!」
俺は、画鋲で掲示板に紙を貼り付けた。
「ふう。これでよし。」
俺は掲示板に貼った紙を見た。
「先生に、俺たちがやったってバレないといいな」
「あっ、でも俺たち、学年新聞係だから今月の新聞はこれにするか!」
新聞係っていうのは、毎月、掲示板に自分たちで作った新聞を貼るって係だ。
俺は、紙の右端に「学年新聞今月号」と書いて教室に戻った。
これでいいんだ。
5時間目の授業初め。担任が教室に戻ってきた。
「おい、誰だ掲示板にイタズラしたやつは!」
俺たちはびっくりした。
やばい。そう思った。
そのあと、俺たちは20分くらい怒られた。
下校中、俺と智也は放課後に、小さな池のあるいつもの公園に遊びに行くことを約束した。
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