第2話 楽器をやめる原因という名の黒歴史
昼休み。
通常の教室の雰囲気なんて、今日は一切感じなかった。俺は智也と一緒に例の特製トイレットペーパー爆弾を投げ合っていた。
クソみたいな学校のルールなんか無視して、授業中だろうが休み時間だろうが、ハチャメチャに遊びまくるのが俺のスタイルだからな。
とにかく授業なんて退屈なんだ。
誰もが大人しくしている時にこそ、本当の楽しみがある。
「お前、ちょっと見てみろよ!」
俺は智也に小声で言い、トイレットペーパーをぎゅっと握りしめてウインクした。
智也は笑って頷いて、周りを気にしながらも、その瞬間を楽しみにしている。俺の周りには、音楽なんてクソくらえって思っているヤツばっかだし、楽器なんてやる気もなかった。
いや、元々は楽器にも興味あったけど、あの日のあの指揮者のクソみたいな言い方と友達に裏切られたのに腹が立ってたんだ。
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あれは、1ヶ月くらい前の出来事だった。
俺は吹奏楽クラブに通ってて、そこでコントラバスをやってた。もちろん、そこには智也も通ってる。
その吹奏楽クラブの顧問こそが、俺が楽器をやめる原因の1人となった
この吹奏楽クラブは毎週末と放課後にあって、もうすぐ毎年恒例の地域文化祭がある。
今年は俺たちのクラブが主役だということもあり、みんな緊張していた。
特に、指揮者の岸本先生は厳しくて、音楽に対する情熱が熱すぎだった。
だから、何かと俺たちにプレッシャーをかけてくる。
「もっと大きな音で!音楽は魂を表現するものなんだから!」
・・・というのが、彼の口癖だった。しかし、そんな真面目さは俺には合わなかった。
俺は自由にやりたいのに、岸本先生は俺が思い描く楽しみを全然理解してくれなかった。
さらに、友達の中には、緊張からか本番でバラバラになってしまったヤツもいて、それを見ていたらあまりにも腹が立った。クソみたいに責任を押し付けられた気分だった。
「おい、吉野!」
基礎合奏中、いきなり名前を呼ばれて俺は驚いた。
確かに、ここのこの音を間違えたのは俺だけど。
俺は、この吹奏楽クラブで先生に叱られまくってた。
特に悪いことをしてたわけでもなく、俺は怒られた。
ーいや、俺が今までにしてきたイタズラのせいで、先生の堪忍袋の尾が切れたのか?
その時、1部の生徒たちの方からかすかな笑い声が聞こえてきた。
その日、あの教室の隅で、あの友情が崩れ去る瞬間を目の当たりにした。俺は怒りに燃えていた。
「もうこんなクラブ知るか!」
そう思いながら、気を紛らわせるために、親友の智也と一緒にバカなことでもしようと決意した。
俺はその時、とんでもない提案をしてしまった。
「な、智也。この退屈なクラブぶち壊そうぜ」
俺は意気揚々に言った。
智也は笑いながら頷いてくれた。
それからというもの、俺と智也は壁にペンで落書きしたり、先生の悪口を言ったりといろいろヤバいことをした。
ーそれが、俺の人生を少し変えてしまうとも知らずに。
2週間後、俺はクラブに行った。
そのとき、思いも寄らない光景を目にした。
なんと、クラブの入り口のドアに、「閉鎖しました」と書かれた紙が貼られていたのだ。
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・・・というのが、俺が楽器をやめたくなった原因だった。
昼休みも終わりに近づき、どんどん教室に戻ってきた。
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