2 . 困 惑

起きてお母さんからの返信を見て驚愕したものの、急いで朝の支度をして家を出た。


通勤ラッシュの満員電車で人の波にもまれながら、思考をめぐらせる。


お母さんでは無いとしたら一体誰なのか。


昔から抜けたところのあった自分には、世話焼きな友人が多かった。というか、みんなが世話焼きになっていく。


しかし、合鍵を持っているのは両親のみで、友人どころか兄妹にも渡していない。


昨日は疲れていて食べてしまったが、一夜寝て冷静になった脳はフル回転している。


ストーカーというものなのだろうか。


危険なものが混入していて、それを食べてしまってるのではないか。


薬でも入っていたのだろうか。


会社に着いてからもその事で頭がいっぱいで、業務が手につかなかった。


いつもなら終電までには終わらせていたのに。終電を逃し、タクシーを拾い帰った。


ゾンビのように遅い足取りで自身の部屋まで向かい、入る。


昨日のようないい匂いはしない。


リビングに入ると、机の上にメモがあった。


「遅くまでお疲れ様。

  晩御飯は冷蔵庫に入れてるよ。

  温めて食べてね。何も混ぜたりはしてない

  から。

  あと、お弁当も入れておいたから。

  会社でもちゃんと食べてね。」


仕事が長引いたことも、会社では栄養食で終わらせていることも、なぜ知っているのか。


長引いたことは、遅かったから。と言えばいいが昼は?


少しの恐怖を感じたが、今のところ害はなく。むしろ生活水準を底上げされてるようで、ストーカーだとしてもいいかもしれない。


と受け入れだしてしまった。


冷蔵庫には、ラップをされた主食、主菜、副菜…。


今日もまた美味しそうだ。


もう、難しく考えるのはやめにしよう。疲れている時に、ご飯もお風呂も掃除もしてくれている。


死んだように寝て起きて仕事をするだけの毎日の、支えとなるヒーローだと考えよう。


ヒノキの香りのするお風呂に入り、新しく置かれているアイマスクに気がつく。


考えることを放棄して、一日中酷使した目を癒しながら眠りについた。

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