酒池肉林
すいり7
▽ドタドタという靴音が聞こえてきましたネ。
起きて下さい、若い検死官さん。
先輩刑事の皆さんが戻って来られたようです。
なんですか?「寒い」? そりゃそうですよ。いくら毛布をかぶっているとはいえ、こんな所で寝てしまっては。
「仕事なんだから仕方ないじゃないですか」まぁそうですね。
日が変わりまして、もう一月四日です。
丸一日も死体安置所に詰めっぱなしで、さぞかし気分も滅入ったことでしょう。
私? 私はもちろん大丈夫です。皆さんと違って生身ではないですからね。疲れなどを感じることはありません。
ああ、そんなことを言っている間に、刑事さんたちが死体袋を運んできましたよ。
また一人、犠牲者が増えてしまったようです。
九人目のご遺体は三島竜一さん。
龍二さんのお父さんですか。たしか暴力団〝山月会〟の幹部の方ですよね。
遺体発見現場は、神社の境内。
死因は、トリカブトによる中毒死。
死亡推定時刻は、一日前。
体にプライド㎉の文字が刻まれている点や、縛られた跡がある点も、前回の方々と同様です。
特筆すべきは遺体の損壊箇所ですね。
口を横に引き裂かれ〝組の代紋が刻まれたバッチ〟と〝札束〟が突っ込まれていたと。
う~ん……
自宅を調べて頂いていた鑑識の方はいかがでした?
はい、はい。
そうですか。
やはり原宅と大谷宅、一人暮らしの三島龍二宅のエアコンダクトには、気体を逆流させることができるように改造された痕跡がありましたか。
ん?
「お前の言ったとおり原家には問題があった。数年前に訴訟騒ぎがあり、インターネットの開示請求が行われていた」ですって?
ふむふむ、なるほど。
だいぶ繋がってきましたね。
もう手をこまねいている時間はありません。すぐに業者に電話をして、エアコンを設置した作業員を特定して下さい。
はい。
ではその間に、私たちの方は記憶捜査を進めておきましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます