こころの食物連鎖

すいり5

▽再接続を確認しましタ。

 おはようございます。

 本日は、一月三日です。

 刑事のみなさま、新年早々から証拠集めや聞き込みなど、大変お疲れ様です。

 コーヒーをお入れしましたので、少し休まれてはいかがでしょうか? みなさん疲労の色がにじんでいますよ。

 ええもちろん、それくらい簡単に分かります。

 眼球の充血レベルが増加していますし、声紋の波形も乱れています。

 どうぞお掛け下さい。クッキーや飲み物などをご用意しておりますので。

 え? 「死体安置所でコーヒーブレイクはできない」? 

 そうですか、残念です。

 糖分摂取は疲労回復に最適ですのに。

 それはそうと、事件に関して新しい情報は入っていますか?

 え? 

 さらに三人の犠牲者?


 えーと。

 先に続けて犠牲者の確認をしたいと思います。

 六人目の犠牲者は原ヒロミさん。

 ノブ郎さんやノブ子さんのお母さんですね。

 

 七人目の犠牲者は原タケシさん。ああ、あの原課長でしたか。

 原ヒロミさんのご主人でもありますね。

 夫婦そろって亡くなってしまったと……。 


 八人目の犠牲者は大谷蓮さん。

 大谷賢治さん大谷麗子さんの息子さんであり、大谷凛さんの弟ですね。

 

 三者とも死後一日が経っています。

 死因はトリカブトによるもの。

 体には縛られていた跡と〝プライド㎉〟の文字、ですか……

 行方不明者が次々と亡くなっています。

 大変おぞましく、由々しき事態です。

 科捜研に所属している身として、成果を上げられていない現状を大変申し訳なく思います。

 

あのですね。

 昨夜、皆さんが帰ったあとに推理していたのですが、この事件は被害者が一人ずつ個別に誘拐されたのではなく、ファミリー単位で一斉に連れ去られたように思うのです。

 そう考えた方が自然です。

 家族のメンバーを別々の日に攫うことは不可能です。なぜなら、家族の一人が行方不明になって音信不通になった時点で、残りの家族がすぐ警察に通報するからです。

 これは犯人が、何らかの方法で家族全員を外に呼び出したか、全員が自宅にいる時を狙って一斉に誘拐したか、のどちらかでしょう!

「分かりきったことを言うな。最初からそういう線で我々警察は動いている」そ、そうですか。

 えーとそれでは……聞き込みなどの結果を教えてもらえます?



 ふむふむ。

 十二月の二五日~二九日にかけて、大谷家と原家の周辺で不審なトラックの目撃証言あり、と。

 深夜だったので詳細は分からないが、なにやら荷物の積み下ろしをしていたようだった、と。

 ええと。

 鑑識の調査によると、どの家の中からも食器や冷蔵庫からトリカブトは検出されず。

 石油ストーブや給湯器から、一酸化炭素が漏れた形跡も無し。

 不審な点としては、三島龍二の家・原家・大谷家のリビングに設置されていた、ガス感知器がすべて故障していたこと。

(ただし例外として、三島竜一氏が一人で住むオートロック式の高級マンションでは、ガス感知器は正常に機能)

 なるほど。なるほど。

 う~ん……

 未だに犯人像、見えてこないですね。

「もうお前の推理には期待していない。早く被害者(ガイシャ)たちの記憶を見せろ」ですって?

 はいはい、わかりましたヨ。

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