17 沈黙と欲
得るものが無ければ、失うものは無い。だが欲望ばかりが膨らみ、それに気づかないよう男は煙草を燻らす。欲がその人を欲しているのをただひたすらに耐えるのだ。その人が男に気付き、手を振る。得れば失うと知っているから、男はその場で手を振り返す他なかった。「馬鹿だなぁ、俺は」
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