11.立体似顔絵

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 =========================

 夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。

 夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。

 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。

 笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。

 高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。

 榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。

 久保田管理官・・・警視庁管理官。テロ組織対策室をサポートしている。

 中津警部・・・テロ対策室勤務ではあるが、弟の中津興信所と連携して仕事をしている。EITO東京本部にも協力している。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。

 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。

 ※デュプレックスシステムとは、1つの処理に対して2組のシステムを用意しておき、一方は障害が発生した際の予備機として待機させておく手法です。通常は主システム側で処理を実行し、障害によるシステム停止や結果の誤りが検出されたときに、待機させておいた予備システムに切り替えて処理を続行させることが出来る。


 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。

 笠置がメールを開くと、久保田管理官からの依頼のメールが転送されてきていた。

 どうやら、特殊詐欺グループが那珂国マフィアと組んでいるらしい。ダークレインボウではないらしいが。

 送られて来たデータは、どれも『似顔絵』だ。笠置が、本社に電話すると、社長の優香が出た。まだ帰っていなかったらしい。繋がらなかったら、自宅にかけ直す積もりだったが、その必要はなくなった。

「新しく追加したシステムを試してみて。平面の絵から3Dに変形、アバターまで作れるわ。詰まり、『立体似顔絵』ね。その立体似顔絵のデータをマッチングシステムに導入するの。そろそろ帰るわ。後、よろしくね。」

 スピーカーから聞いていた高山は、「どんどん進化して行きますね、このシステム。」と笑った。

 素材データが出来上がったので、笠置は、コピーをマッチングシステムに流した。

 15分ほどで結果が出た。グループの1人が前科者データと一致したのだ。

 2人目は、お名前カードデータと一致した。

 急いで、笠置がメールに添付して送ると、久保田管理官がマルチディスプレイに出た。

「ご苦労様。芋づるになるといいんだがな。それより、未だに、引っかかる高齢者がいるのに驚くね。」

「所謂『核家族』が出来る前は、息子や孫の声を判別出来ない高齢者なんていなかったでしょうね。」と、高山が言うと、「そうかも知れないな。昔は、家族全員でメシ食ったもんだ。」と、横から榊が言った。

「榊さん、今夜のメニューは?」と久保田管理官が物欲しそうに尋ねた。

「今夜は単純に『焼き肉』。鯨肉だけどね。」と、榊は笑った。

「いいなあ。あ、中津警部も頼み隊データがあると言っていた。後でチェック願います。じゃ、よろしく。」

 マルチディスプレイから久保田管理官が消えると、程なく中津警部からメールが届いた。

「成程。中津興信所の依頼主が『似顔絵データ』しか持っていないらしい。間接的な捜索願って書いてある。間接的?」

 首を捻って。笠置がシステムを使うと、3分で答が出た。

 お名前カードデータからだ。笠置は、住基データと共に、中津警部に送った。

 すると、中津興信所所長から、お礼のメールが届いた。

「使えるね、立体似顔絵。」と笠置が感心していると、榊が「立体お肉もいけるよ。」と言って、給仕を始めた。

 3人は、遊んでいる訳でもない。夜食にカロリー高めの食事はしても、カロリーコントロールはしている。

 夜は長い。

 明け方になると、退勤。

 知る人ぞ知る、夏目リサーチ分室だ。

 ―完―


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