10.選挙の裏側

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 =========================

 夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。

 夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。

 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。

 笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。

 高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。

 榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。

 久保田管理官・・・警視庁管理官。テロ組織対策室をサポートしている。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。

 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。

 ※デュプレックスシステムとは、1つの処理に対して2組のシステムを用意しておき、一方は障害が発生した際の予備機として待機させておく手法です。通常は主システム側で処理を実行し、障害によるシステム停止や結果の誤りが検出されたときに、待機させておいた予備システムに切り替えて処理を続行させることが出来る。


 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。

 笠置がメールを開くと、中津警部からの依頼のメールが転送されてきていた。


「なるほどなるほど。1人の男と2人の女か。評論家で一番目立っているのが壬生だからな。そもそも、万一『不倫』していたって、仕事ちゃんといていれば問題無いはずなんだがなあ。」と笠置が言うと、「印象操作。まだ通じると思い込んでいる輩が多いからねえ。」と、高山が言った。

 15分。答は出た。

「2人の女が双子かどうかを調べろ、って書いてあるから『顔認証システム』を先に起動させたよ。」

 ここのマッチングシステムは、そもそもが『デュプレックスシステム』の為、メインのシステムが照合している間の『予備』システムが存在する。メインに障害が起きたとき、自動的に切り替わる為、その場合、笠置達はEITOに連絡して、復旧作業が終るまで指を咥えて見ているしか無い。

 笠置達の作業は、メインシステムが正常に動いているかどうかの監視を行い、サブシステムで『急ぎの』照合を行い、報告することにある。

 明け方、笠置達が出る頃には、全てのシステムはダウンし、ロックが掛けられた上で電源が落ちる。

 素人にも出来そうな作業ではあるが、昼間の、本部作業のような『バイト君』には任せられない。機密事項を扱う為、『信頼された』人間以外はアンタッチャブルである。

『顔認証システム』自体は警視庁が開発したシステムで、そのシステムを、このマッチングシステムに組み込まれている形となる。

『顔認証システム』では、変装を見破る様な機能があり、元の人間の顔を復元出来る。

 鑑識や科捜研で多用され、指名手配犯のモンタージュに役立っている。

 復元した女の顔と、サングラスをしていない方の女の顔をマッチングすると、『双子かも知れない』というパーセンテージが出た。100%に近いなら同一人物だ。

 そして、それぞれをパーソナルデータが入っている運転免許証データとお名前カードデータと照合すると、それぞれの名前が出た。

「1人は神藤ちなみ。もう1人は神藤ちえみだ。ちなみは運転免許証データ、ちえみはお名前カードデータにあった。アリバイ工作しながら、佐藤さんを嵌めたんだろうな。」

 そう言って、笠置は警視庁にメールを送った。

 榊は、珍しく『豚肉ショウガ焼きセット』を作った。

 午後11時過ぎ。

 久保田管理官から電話があった。

「人とも、いや、壬生を入れて4人ともゲロしたよ。週刊誌にリークしておいた。女2人は壬生の腹違いの姉妹、そして、白田の第一夫人、第二夫人だ。」

 それだけ言って、電話が切れた。

 夜は長い。まだ始まったばかりだ。

 榊は、ワインを用意した。

 ―完―

 ※このエピソードは、「こちら中津興信所49」とリンクしています。



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