第三話 #配信者の姉と妹

 俺には一つ離れた姉がいる。

 

 そんな姉はインターネット上で配信者として活動している。


 活動名はおもしろチャンネル。

 相変わらずのいい加減さが、活動名にまで侵食しているな。

 


 登録者数は脅威の330万人。

 一月ほど前に始めたアンタレスが今40万人なので、およそ八倍も差がある。

 俺のお姉ちゃんまじ半端ねえ。

 

 スタイルが抜群で、顔も綺麗でカッコいい顔立ちなので芸能事務所にも所属しており、モデルとしても活動している。


 おもしろチャンネルが着ている服は次の流行服と言われる程、10代を中心とした多くの若者が姉を支持しているらしい。


 そんな姉の配信者としての活動は、ゲーム、雑談、お料理、ダンスなど、様々である。


 大抵の配信者はゲーム系、お料理系、などちゃんと活動者ごとにカテゴライズされていることがほとんどだと思う。

 

 しかし、姉は自分の好きなことを発信していきたいから一つのことに囚われないなどと供述しており、活動方針は特に定まっていないようだ。

 うちの姉は何しても人惹きつけるオーラでも持っているからの芸当だろう。

 到底俺には真似できやしねえ。


 更にはファンの対応も素晴らしく。

 街中で声をかけた時は笑顔で丁寧に写真を撮ってくれました。(都内10代女子)

 普段はクールビューティーって感じなのに対応が暖かすぎて温度差感じた(20代男性)などなど。

 好感度高めのコメントの数々がSNSによく投稿される。

 

 そんな姉は現在芸能活動を半年前から休止している。当然配信の方も。

 理由としては多忙すぎて休む暇ないから休みますだそうだ。


 復帰を望むファンは多く、復帰するまで毎日正拳突き配信を行うファンがいる程の熱狂的な方もいらっしゃる。

 なんて愛されている姉だろうか。

 

 姉と俺は今現在同居している。

 半年前、ちょうど活動休止を発表したと同時に俺の家に突然来て、今日からお前ん家住むからよろしくね! の一言。

 事前連絡しないあたり、姉に常識が無いことが伺える。


 あんたでっけえタワマンに住んでるじゃん、と返すとあれ事務所が管理してるところだから、働かないなら出てけって追い出されたそうだ。

 路頭に迷った姉は、実家に帰ろうとしたが電車の切符の買い方が分からず、とりあえず近くに住んでいる俺のとこに来たらしい。

 なんか乗り換えが理解できなかったんだとか。


 姉について語るにはまだまだエピソードを話す必要があるが、割愛しよう。

 また今度話すとしよう。



◇◆◇



 さて、本題だが配信者になるためには機材が必要だが、機材についてまるで素人の俺は配信者の姉に連絡。

 

 すると、あたしの部屋に使ってた機材あるから勝手に使っていいよとの返答。

 

 それを聞いた俺は爆速で帰宅。

 玄関に置いてある、姉が置いてくれたであろうダンボールを片手に自分の部屋へGO。


 俺は今目の前にあるダンボールが楽しみで仕方ない。

 だって登録者330万人超えの大人気配信者が使っていた機材だぜ? そりゃあいいモノ扱っていたんだろうな!

 カメラとか四桁万とか行きそう。

 

 別に俺も金銭的にはそのくらいだったらあまり痛くもないので自分で買ってもいいのだが、やはり使わなくていいのならそれに越したことはない。

 お金は使ってこそ回るものだ、とかダンジョン省のお偉いさんによく言われるがまあいいだろ。

 そんなことは今はどうでもいい!


「それじゃあ開封の義! 早速開けちゃいますか!」


 蓋が閉じられている、機材と書かれているダンボールのガムテープをペリペリと外したその瞬間———。


「わあ!!!!」

「ぶわあああ!!!!???」


 ダンボールから勢いよく姉が飛び出してきた。


 うっわ! びっくりした! そうだ、俺の姉はこういう人だった……。ちくしょうやられた! 普段クールぶってるくせに割とイタズラ好きなんだった。


 …………なーんて嘘だけど。

 探索者が気づかないはずがないだろう。

 明らかに運んでいるとき中で動いていたしな。

 くひひって声聞こえたし。


 しかしそれでも気づかないフリをしなければならない。ここで気づいてましたなんて言ったらブチギレ案件。

 姉全体というか、この姉はひたすらに理不尽なのだ。

 バレたらめんどくさい。


 だからここで俺がするべきことは、


「びっくりした? それでね、機材なんだけど……ふにゃ!?」

「開ける箱間違えたか……コレはとりあえずあった場所に戻しておこう」


 引っかかってあげるのではなく、元に戻してあげるのさ。

 

 姉の頭を鷲掴みにし、ダンボールの中へとフェードアウトさせる。

 当然、一概のモデルである姉が探索者の俺に力で敵うはずがなく、あっという間に姉は収納されてしまった(笑)

 

 これでよし! 悪質なイタズラはこれで解決だな!

 いやまあやられっぱなしはなんか嫌だから仕返ししたんだけどな。


「ぷはっ、ちょっと何すんのさ! 死ぬところだったでしょうが!」

「うるせえ! ビビらせる方が悪いね!」

「なんだと、姉の恐怖をクロに植え付けてやる!」


「二人ともまじうっさい!」


 やいのやいのと騒いでいると、バンッ!と扉が開けられた。

 開けたのは妹。

 あ! やっべえ、すげえまずい!


「ねえ、二人共。私が配信中にうるさくしたら次はないっていったよね?」

「唯ちゃん……? お姉ちゃんそんなこと聞いてないなーって……というかいけないのはクロだよ!」

「おい!? 人のせいにするなよ!? あの唯……いや、唯さん。今回のことは申し訳なかった。だから、本当に許してくれませんか……?」

「無理だよ。次はもうないって前に言ったでしょ? その時はもうしないって言ってたのに……。まあ期待なんかしなかったけど」

「唯ちゃん!」

「そこをなんとか!」

「明日から朝ごはん、自分の分しか作らないからね。二人でなんとかして? それじゃあ視聴者リスナー待たせてるからいくね。今日はもう、静かにしてね」

「そ、そんな……」

「それじゃ」


 無慈悲に食卓に俺たち兄姉のご飯が出ることはもう無いと告げられた俺たち二人と、俺たち二人を見捨て部屋から出ていく妹。


 なんてこった、この家で唯一ご飯が作れる妹が料理を拒否してしまった。

 あの暖かい手料理を食べてこそ一日が始まるというのに……。

 残された俺はもちろんのこと、姉も料理などまるでできない!

 明日からは黒焦げと化した暗黒物質ダークマターを食べることになるのだろう。

 最悪だ。

 

「「……」」

 

 そう事の重大さを理解した時には妹はもう居ない。

 言い訳もできずゴミを食らうことになる俺たちは悲しみに暮れるのだった。


「「唯ー!」ちゃんー!」








◆◆◆



「ってか言ってた機材は?」

「そういえば全部事務所のやつ借りてたからないんだったわ」

「死ね」








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