第二話 #真っ直ぐな思い、それは嫉妬
ダンジョンで修行をした後、受付で戦利品の換金を済ませた俺は、午後八時を回っていることを確認。
お腹が空いたので、ちょっと遅めの夜ご飯を食べるためフードコートにやって来た。
店番している黒髪セミロングお姉さんの方へ向かい、カツ丼を注文。
代金を払い、カツ丼を受け取ろうとしたその瞬間。
備え付けのドでかいテレビから何やら聞いたことある声が聞こえて来た。
『———奥の方にミノタウロスがいるね。全部で……五体居るようだ』
こ、この声は間違いなく
テレビの方へ振り向くと、やはりあの憎たらしいアイツが画面に映し出されていた。
ミノタウロスと戦っているアンタレスの映像をみるに、日本ダンジョン五十五階層ら辺だな。
ミノタウロスが出現するのがその辺だし。
しかしなぜアイツがフードコートのテレビに……? しかもなんでダンジョンを攻略しているところを放映しているんだ?
これがマジノコが言ってたダンジョン配信ってやつか?
疑問が絶えないな。
「あら〜、やっぱりクロちゃんもアンタレス様が気になるの?」
「気になるっちゃまあ気になるけどさ。なんでアンタレスがテレビに出てんの?」
「最近アンタレス様がダンジョン配信を始めたじゃない? ダンジョン配信は動画配信サイトでやっているんだけど、私が仕事中に配信してるからいっつもリアルタイムで見れないのよね〜。だから仕事中でも見られるテレビにアンタレス様がライブ配信を開始したらその映像を流してくれるように私がリーダーに頼んだの!」
「あ、そ、そなの」
なるほど、アンタレスが直々にギルドに談判してお願いしたわけじゃないのか。
一概のアンタレスファンが、リーダーにお願いしてアンタレスのダンジョン配信を流しているわけか。
リーダーというのは多分、長年あそこで働いているおばちゃんのことだろうな。
おばちゃんアンタレスのこと好きだもんな。
『ふぅー……。こんなもんかな。やっぱりミノタウロスぐらいなら丸越しでもいけるね』
「キャー! B級モンスター相手に無傷な上に素手で勝っちゃったわよ! さすがアンタレス様! アンタレス最強!」
しかし、いつも俺が注文を頼むこのお姉さんがここまで熱狂的なアンタレスファンだったとは。
…………世知辛いぜ。
俺、あんたのこと可愛いくて明るいし、何より俺に話しかけてくれるからちょっと好きだったのに。
……なるほど、これがNTRってやつか、クソが。
俺の恋まで邪魔するとはアンタレスめ、許すまじ。
「クロちゃん……? 何ぼおっとしてるの? ご飯冷めちゃうよ?」
アンタレスへの怒りを再確認をしていると、お姉さんが俺のカツ丼について指摘をしてくる。
キョトンとした顔がなんとも言えぬ可愛さをしております。
俺のためにと思ってそんな発言をしてくれるなんて、本当は俺のことが好きなんじゃないか!?
『それじゃあキリもいいし、配信を終わろうか。それじゃあみんなバイバーイ!』
「あ、配信終わっちゃう! アンタレス様バイバイ!」
などと考えていると、お姉さんは配信を終えるアンタレスに対してバイバイをした。
俺にだってバイバイしたことないのに……!
あんなメス顔で反応しちゃってさ!
クソ、その顔を俺にだけ向けてくれよ!
一体どうしたらこのお姉さんを俺に振り向かせることができるのだろうか。
やはりアンタレスを差し終えて最強になるしか……。
いや、それだといつまでかかるか分からねえ。
何より生涯越えられないかもしれない。
どうしたものか……。
「はあ、今日もアンタレス様はかっこよかったなあ……次のダンジョン配信はいつかなー。もう今から楽しみだなぁ!」
ダンジョン配信。
そうか、ダンジョン配信だ!
マジノコによるとアンタレスは最近インターネット上で配信活動を始めたと言っていた。
探索者界隈では最も古参と言っていいアンタレスも配信界隈ではまだまだ
探索者としては遅れをとったが、俺も今からダンジョン配信者になれば。
奴に勝てる余地があると言うこと!
奴に登録者数で勝ち、配信者として大成すれば、フードコートのこのお姉さんを俺の物にできるかもしれない!
さっきのドでかいテレビにも俺の配信が放映され、それをまたお姉さんが黄色い歓声をあげるのだ。
うん、たまらねえ!
おっといけねえ、よだれが口から溢れ出ちまうところだったぜ。
「あ、クロちゃん、後ろ詰まってるから早くどいてくれる?」
善は急げ! 今日から俺はダンジョン配信として活動を始めるんだ!
「何ガッツポーズしてるの! そこ早くどいて!
後ろの探索者さんが邪魔そうな目でみてるよ! 聞いてるの!」
「あ、はいごめんなさい」
注意された俺は、カツ丼をサッと受け取り、すぐさま俺の定位置のテーブルへと移動。
うん。
どうやら今俺がすべきなのはダンジョン配信ではなく、人に迷惑をかけないことだったようだ。
やっちまったぜ。
でも、怒ったお姉さんも素敵だったなぁ……。
にしても配信を始めるとならば機材用意しなきゃな。
幸いお金はあるし、折角だから全部グレードの高い物にしよう。
しかしなあ、どんな機材がいいかなんて知らんしなぁ。
「あ」
そこまで考えて、とある家族の存在を思いだす。
ちょうどいい人材がすぐ近くにいるじゃないか。
なんなら一緒に住んでいるしな。
相談したらきっと乗ってくれることだろう。
そう思った俺は早速、配信者の姉へと連絡をするのだった。
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