番外編 side りん

ここ最近の日課は、通り道にあるペットショップをのぞくこと。

新しく出来たみたいで、小さい犬、猫が多かった。

飼えないのはわかってるけど、なんとなく癒しを求めてショップを覗くことが日課だ。

どの子も可愛い。

「動物でも個性ってあるんだなぁ。」

私はニコニコしながら色んな子を見ていた。中でもお気に入りは白い小さい犬。ものすごく小さくみえる。産まれたてかな?なんて思ってみていた。


たぶん私の顔が強張ってきたのは、2カ月経った頃だと思う。

どの子も夕方なのに寝ていて前みたいに飛び跳ねたり、人がみていても顔をあげたり、ウロウロさえしなくなった。

同じく見てるだけの癒しの常連さんが、始めて私に声を掛けてきた。

「最近、元気ないと思いませんか?」

ケースを見ながらコソっといった。

「私もそう思っていました。チビちゃんがずっと蹲っているのが気になってます。」

私がそういうと、常連の男性が少しだけ笑いながら、

「チビちゃんって、白いカッププードルの子のこと?」

といわれ、私が勝手に名前をつけたことに笑っていた。

私じたいも、その時始めて名前をつけていた事に気付いた。

「そ、そうです。始めて見た時に笑ってくれた気がして、その時からお気に入りなんです。」


あの時からもう1か月様子を伺いながら見ていた。

癒しを求める常連さん達の何人かと情報を共有したりすることがあった。


あきらかにみんなが痩せてきて毛艶が悪くなってること。

どの時間に来ても寝ているかのように丸まっていること。

ご飯の時はケージから出し裏であげているみたいだけど、すぐに戻ってくること。


チビちゃんを出してあげたいけど、チビちゃんの値段が高い!

貧乏OLには手が出ない。他にも色々買わないといけないし。

私には見守ることしか出来なかった。

転機が訪れたのは、常連さんからの一言だった。

「明日このショップ閉店するの知ってる?」

その言葉をいってきたのは、最初にわたしに話掛けてきた常連さんだった。

「え?なんで!? チビちゃん達はどうなるの?」

「可哀想だけど、保健所いきじゃないかな?どの子も身体が弱ってるって。」

「そんなの嫌だ。みんなを助けてあげることは出来ないけど、だけでも助けたい。今すぐお金下ろしてきます。」

と、私が飛び出そうとした所に常連さんが腕を掴んでショップから連れ出した。

「ちゃんと飼えるの?飼える環境?実家暮らしなら家族全員の許可が必要だし、賃貸なら動物可かわかってるの?同情だけだとここの人達と一緒ですぐ保健所行きだよ。それには小さすぎる。病院通いは必要かも。」

私は一瞬怯んだ。1人暮らしで安月給。賃貸のほうはペットOKだ、この間どうしてか契約書を見直した。

問題はお金だ。


「飼っていくのは大丈夫だと思います。賃貸契約書も見直してペット可だったから。でも購入資金が高くて、悩んでいたけど手持ちの貯金崩してチビちゃんを救い出さないと。」

私は頭をフル回転させて、近くの銀行と閉店までの時間を算出していた。

とりあえずを購入して、明日休みだから必要なものは明日買えばいい。


私は情報を教えてくれた常連さんにお礼をいって、お金を用意するつもりだったのだが、常連さんいわく迎えるなら明日のほうがいいよ、とのことだった。

なぜ?と聞くと閉店セールできっと少しは安くなるからとのこと。

でも私はだから飼うのであって安くなって他の人に取られるのは嫌だと思っていた。常連さんのアドバイスを無碍にするが、すぐにうちの子として、迎えいれたかったのに無情にも閉店の音楽が流れてきた。

そんなに長く話したつもりもなかったのだが、手持ちのお金じゃチビちゃんは飼えない。一瞬常連さんを睨んでしまったが情報をくれたのだ、チビちゃんを家に迎える覚悟も決められた、睨むのは違うかぁと思い

「情報ありがとうございました。では失礼します。」

と一般的な挨拶をして出入口のほうへ足を向けて歩きだした。

「引き留めてゴメンね〜、また明日。」

と後ろから声をかけられた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る