第2話 2−1戦線

「なんだ…これ!」

誰もが動揺している。学校中でも騒ぎになっているし、学校の外からも叫び声が上がっている。

「ゆら!外!」

学校の外を見ると、機械型の天使に人々が襲われている。いや、一方的に殺されている…!

「「キャァァァァッ!!!」」

「うそだろ…!!」

「まじかよ…。」

叫び声が引き金となり、学校中がパニックに陥ってしまっている。

「そ、それじゃぁここも危ないんじゃないか?早く出ないと!」

ドンドンドン!!ガン!!

慌てる声とともにドアを殴る音が聞こえる。

「くそっ!ドアが開かねぇ!」

快斗がドアを開けようと殴っている。

でもそもそもあのドアは天使が制御しているから複数人で挑んだとしても結果は変わらないだろう。

「じゃあ私たち閉じ込められたの?」

……絶望がクラスを包む。

青ざめる者もいれば泣き始める者もいる。




―――――ゆらが沈黙を破った。

「……あのさ、多分学校にいるほうがまだ安全だと思う。」

数名の生徒が顔を上げる。

「外の様子をみる限り、まだ中のほうが安全だし、殺戮天使が来るまで考える時間も少しはある。諦めないでどうにかしよう。」

「そ、そうだな。確かにゆらの言う通りだ。」

そういったのは、クラスの中心である、三木蒼介だった。

「じゃあ具体的にこれからどうする?」

三木が聞くと、ゆらが、

「そうだな…一旦武器、もしくは盾になりそうなものを教室中から集めよう。あとは教室にいる攻撃能力のない天使はもったいないけど全て壊そう。例えば自分の天使とかスクリーンとか。」

「ん?別に壊す意味はなくないか?攻撃力がないなら。」

「天使にはネットワークがつながってるし、カメラがあるからこっちの情報が筒抜けになってしまうから壊したほうがいいよ。」

「…!なるほど。それじゃぁ自分の天使と、クラスの天使を壊していこう。」

ゆらと三木が作戦を立てたことで、安心感が出てきたのか、ざわめきが少なくなり、各々天使を破壊し始めた。

「流石美咲ゆら様〜!クラスをまとめるのが上手でございますね〜。」

「遥お前のんきだな。今天使が学校に入ってきたらどうすんだよ。」

その時だった…。


パリイイィィィンッッ!!


窓ガラスが割れる音が教室中に響き渡り、全員の視線が窓ガラスに集中した。


「「え?」」


ドドドドドドドッッッ!


「キャァァァァ!!!」

「グハァッっ!!」

「来るなっ!来るなぁっ!!」


ドアの外から銃声と叫び声が聞こえる。

「…………これって、」

「……多分、天使が学校に入ってきた。しかも……この階に。」

またもや教室がパニック状態に陥る。

「それじゃあどうすんだよ!」

「意味ねえじゃねえかよ!」

「もうだめっ!」

「なにフラグ立ててんだよゆらぁぁぁっ!!」

(……困ったな。攻めてくるのはもう少しあとになると思っていたのに。)

「………仕方がない。とりあえず武器を集めて迎え撃つ準備をしよう。」

「武器になるものなんて教室にはなにもないぞ?」

「例えば俺たちがいつも座っている椅子とかは鈍器にはなるだろ。」

「あぁ!確かに。」

「一つ一つ考えていこう。勝算はまだある。」

(……こうしてる間にも銃声が近づいてくる……。)

銃声は5クラス分くらい向こうから聞こえてくる。

遥が外をしばらく眺めたあと、にやりと笑ってゆらに言った。

「まだ賭けだけど勝算はあるかも知れないぜ、ゆら。」

するとゆらも窓の外をみて驚いた顔で言った。

「まじか……。ちょっときついけど…………賭ける価値はありそうだな。よし!そうと決まれば……。」



「三木、一旦机をドアの方に重ねて寄せさせて。天使は銃を使っているから少しは防げるかも知れない。」

「……わかった。よし、みんなやるぞ!」

「「お、おぉー!!!」」

(さすが三木だ。これでパニックになる心配は少しは減るな。ただ……)

まだ、過半数の人が震えている。やはり、恐怖がないわけではないのだろう。

だけど、こうしている間にもどんどん銃声が近づいてくる。


ガタッ……!


……全員の視線がドアに釘付けになる。

「来た………!!構えろっ!」

ゆらが出した合図と同時にみんなが椅子を構える。

ドアが開く。外から天使型のロボットが入ってくる。


ドドドドドドドドドド!!!


「伏せろっ!!」

銃声が大気を切り裂く。火薬の光で向こう側が見づらい。バリケードのお陰で少しは防げているが、あたってはいないもののこっちにも少し玉が飛んでくる。思った以上に銃弾の勢いが強い。

「……ゆら!」

「わかってる!けど、俺らの目的は時間稼ぎだ。」

頭の中ではわかっている。……だが、この状態がいつまで続くかわからない。椅子は銃を防ぐのに精一杯だし、そもそも攻撃する暇もない。

(さて……どうするかな。)

すると遥が何かに気づいたような顔をして言った。

「っ!ゆら……!!」

「どうした?遥。」

「多分この銃撃、一定の時間で銃撃が止む時間が少しある。」

「……そうか?銃撃の音は一向に止む気配がないけど。」

「だから多分……音で誤魔化してるんだと思う。ほら………今…………今……………今。」

「……!ほんとだ。」

(言われてみれば確かに、たまが出ていないときが僅かにある。)

「どうする?いくか?」

「……短すぎる!いくらなんでもあそこに突っ込むのは無謀だ。」

「だけどどっちにしろ、このままじゃまず……」


ガタァッッッ!!!ゴドォッッ!


「なっ…!」

とうとう机で作ったバリケードが壊されてしまった。

銃弾がここぞとばかりに襲いかかる。


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!


次々に玉が発射される。火薬の煙と光が更に混乱を加速させる。


「キャァァァァッ!!」

「うわあぁぁぁぁぁっ!!!!」

「……まずい!!」

(このままじゃ―――――)

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