第11話 魔法
魔力判定を終えた俺は、日々強くなることを考えていた。
その中で気づいたことがある。
急激な体の成長が無くなったのだ。
更に上位の魔角が手に入れられないだろうかと考え、以前と同じく意図的に成長反応を起こそうとしたのだが駄目だった。
やはり培養槽の外に出てしまったからなのか?
それとも第七魔角級が最上位だと言われている通り、それより上は存在しないからなのだろうか?
理由はどうあれ、これ以上は難しい気がする。
地道に成長してゆくしかなさそうだ。
だが、それもまた良し。
力だけ手に入っても、それを使う技術が育たなければ意味を成さないからだ。
それを満たしてくれるのが時間と経験。
クルトの言う通り、鍛錬を行う為の機会が与えられたと思えばいい。
そんなわけで今日は前に約束していた通り、クルトから魔法の使い方を教わっていた。
場所は我が家の庭。
この密集した町の環境故、然程広い場所ではないが、一般的な家庭から見ればかなり余裕がある。
魔法を学べる空間が身近にあるだけで有り難いと思う。
「まずは自分の意志で魔角を出せるようにするところから始めないとな」
クルトがそう言う。
「この前、パパが使ってたみたいなやつ?」
「いや、それはまだネロには早いと思うぞ。そうだな……破眼を持っているお前には見えているだろうから、実際に俺がやって見せた方が分かり易いだろう」
クルトは右手を前に出す。
するとすぐに、その掌に前に光の線で描かれた五角形が現れた。
「どうだ?」
「うん、見えてるよ。きれいな五角形」
「おお、もう形の名前を覚えたか。凄いぞ」
いやあ、もう図形の形を知らないで突き通すの大変だから、この前の魔力判定の時に覚えたってことで行かせてもらいます。
「これが魔角基だ」
「まかくき? 魔角とは違うの?」
「いや、一緒だ。ただ、これが魔法を使う上で全ての基礎になる最初の魔角という意味だ。まずはこれが出せるようにならないとな」
「出せたよ」
「なにぃっ!?」
クルトのように右手を前に出して集中すると、光輝く七角形が現れた。
培養槽を割ってしまった時の感覚を思い出しつつ、ここ数日で得た知識と併せて練習を重ねていたら、ここまでは自然とできるようになっていたのだ。
だが、ここから先が何もできなくて困っていた。
「本当にもう出せたのか……?」
「うん、ちゃんと出てるよ。七角形」
クルトからは俺の魔角は見えていないので完全に自己申告になってしまうが、彼は信じられないといった表情を浮かべていた。
「魔角基が発現できるようになるには……通常、早くても一年はかかるんだが……」
クルトは雑念を飛ばすが如く頭を振る。
「いや、これまでもその天才っぷりを見せつけられてきたのだ。ネロならできてもおかしくない……」
「パパ、ここからどうするの?」
「え……ああ、そうだな。次はその魔角基に魔力を通すんだ。体の中に熱い流れを感じたことがあるだろ?」
熱い流れ……。
それは培養槽の中にいた時から感じていた。
やはり、あれは魔力だったのか。
「その流れを目の前の魔角基に通してゆくんだ。堰を開いて川の流れをそちらへ向かわせるイメージだな」
「わかった、やってみる」
体内の魔力を意識し、魔角に向かうよう流れを変える。
直後、七角形の輝きが増したような気がした。
魔力が通ったのだ。
「できたみたい」
「さすが、飲み込みが早いな」
「これでパパみたいな魔法が出せるの?」
「いや、まだだ」
えーまだあるのか……。結構、大変なんだな。
「そのままでは、ただの魔力でしかない。その魔力に属性を与えなければ現実には発現できないんだ」
「ぞくせい……?」
「ああ、正確には〝属性付与〟と言う。例えば俺がこの前、黒蟻の魔物に使った魔法は、魔力に火の属性を付与したことで魔法として発現したんだ」
なるほど、RPGで良くある四属性みたいなものか。
そいつを魔力に与えれば、ようやく目に見えて現れるってわけか。
「その属性付与はどうやってやるの?」
「やり方自体はイメージを強く持つことが基本になってくるが、だからといって何でも付与できるわけじゃない。これは遺伝による所が大きいからな」
遺伝って……一応、俺もホムンクルスでありながら、クルトのディアナの魔伝子を受け継いでいるはずだが……。
「俺は見ての通り、火の属性持ちだ。そしてディアナは水の属性。ということは、俺達の魔伝子を受け継いでいるネロは、火か水、どちらかの属性が顕現するだろう」
火と水かー……。
どっちも格好いいし、捨てがたいな。
それと、イメージが大切って言ってたな。
ちょっと試しにやってみるか……。
「でもまあ、実際に属性付与ができるようになるには、もう少し練習が必要になってくるがな……」
「パパ、なんか出た」
火をイメージした直後、七角形の中心にソフトボール大の炎が灯っていた。
「ふあぁっ!? もう出せたのか!?」
これにはクルトも驚嘆の声を上げていた。
「なんという飲み込みの早さだ……。しかし、火の属性か……。ネロはパパ似だってことだな。ふふっ」
クルトは自分の血を息子に感じたようで、とても嬉しそうだった。
そんな中で悪いんだけど、一応もう一つの属性をイメージしてみた。
そっちの属性にも少し未練があったからだ。
すると、さっきまでメラメラと燃えていた火球が、表面で対流する水の球へと変わってゆく。
「わ、水も出たよ」
「な、なんだとぉぉっ!?」
その時のクルトの驚きようは先ほどの比ではなかった。
彼は狼狽したような動きで母屋に向かって叫ぶ。
「ディ……ディアナーッ!! ネ……ネロがヤバすぎるぞーっ!!」
はい??
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