第55話詰み女子らと移動バス、姉御女子とミニデート
移動バスに乗り込んで数分、出発間近で来亥さんが駆け込んできた。
百合景色に夢中だったのかな。
「ふぅーあぶね……ん? お前らも来てたんだな」
「愛実の応援をしにな。タオルいるか、六華」
「おぅサンキュー」
豪快に顔と体を拭き始めちゃった。
まるで男子みたいな拭き方を見てたら、怪訝な顔で睨まれた。
「見せもんじゃねぇぞ。金取るぞ」
「す、すみません」
何時どこでも変わらない性格は、ある意味尊敬だよ。
そんな汗を拭う姿から視線を逸らすも、毒吐きはまだ続いていた。
「どうせポロリに期待してたんだろ? この変態が」
「ち、違います」
「けっ、どうだか。峰子もなんか言ってやれ」
峰子さんに
「洋の前ならポロリぐらい構わないぞ」
「おいおいおい、冗談キツイぞ峰子」
「本心だが?」
「な……積木……てめぇは、どこまで私をコケにしやがる……」
理不尽な恨み節に言い返せなくても、峰子さんが味方なだけで大丈夫だ。
「……一番後ろの席のデカ女……なんか、峰子に雰囲気似てねぇか?」
麦わら帽子を深く被り、顔を見せない女性は、間違いなく蘭華さんだ。
よくよく見れば、スマホレンズを峰子さんに向けて盗撮してるよ。
「あの人は見なかったことにしましょう」
「そうだな」
「お、おい。お前らだけで納得すんじゃねぇよ」
納得出来なくても、今度僕の家に遊び来たら、嫌でも正体を知れるよ。
「ところで洋。陸上着みたいな軽装が好きなのか?」
「え? り、陸上着?」
「愛実の陸上着に夢中だったように見えたが」
たまたま見入ってただけだよ。
誤解を訂正しようとするも、来亥さんが不機嫌そうな態度で口開いた。
「はん! 内心じゃ、軽装やら薄着が大好物なんだろ?」
「ち、違いますって」
「思春期童貞のお前に拒否権はない。ということだ峰子、コイツは軽装好きだ」
「そうか、ありがとう六華。洋、ポロリは期待してもいいぞ」
「えぇー……」
軽く拳を当て合って、絆を深めちゃってる。
物申す気さえ失せて、ポロリが無いように祈るばかりだよ。
♢♢♢♢
最終区間の会場に到着したけど、まだ時間があるから人はボチボチで、ほのぼのとした空気だ。
「選手もまだだな」
「時間まで適当にブラブラします?」
「洋がしたいならする。六華もどうだ?」
「行かん。じゃあな」
素っ気なく離れ、我が道を行く精神も、ある意味尊敬できる一つかな。
適当にブラブラするにしても、リサーチした方が良さそうだね。
今回の目的は愛実さんの応援だし、間に合わなかったら元も子もないもんね。
早速スマホで近場を検索だ。
雑貨屋さんやテラスカフェ、時間潰しに最適のラインナップ揃いだね。
「沢山ありますね……どこにしましょうか?」
「洋が良かったらなんだが、手当たり次第がいい」
「随分と攻めますね」
「せっかくの2人っきりなんだ。色々見て回りたい」
そうと決まれば、一番近場の雑貨屋から回ればいいかな。
木陰の涼しい歩道を歩き、過ごしやすい気候は心地よく、峰子さんも嬉しそうに、僕を見て微笑んでる。
「こうして歩いてるとデートみたいだな」
「そう見えるかもですね」
「こうすれば、もっとそう見えるな」
指を絡め合う恋人繋ぎじゃないか。
ここまで積極的だと、どうしようもなくチグハグなるよ。
「お、あそこじゃないか?」
割と大きめな雑貨屋だね。
木製の可愛らしい雑貨がメインで、癒される木の香りも雰囲気もいい感じだね。
「洋。木のマグカップがあるぞ」
「木目が良い感じですね。あ、ペアセットだと安い」
一つ3000円が、ペアセットなら1000円安いや。
気になるってるのか、ジーっと眺めてから元の場所へと戻していた。
やっぱり値段もあるし、見て回る事がメインだもね。
一通り店内を回れたし、次の場所に行こうかな。
「次行きましょうか」
「あぁ。先に外で待っててくれないか?」
「? 了解です」
どうしたのか思う間もなく、ものの1分で戻って来たし、次のテラスカフェも、少し遠くに看板が見えて、あっという間に到着。
テラス席からの眺めのいい景色と、肌心地の良いそよ風が合わさって、雰囲気は最高だね。
メニューも和中心で、メニュー写真にどれも目移りしちゃうや。
「迷いますね……あ、これもいいな」
「ふふ……洋、慌てなくても時間はある」
「で、ですね。峰子さんは何にしましたか?」
「アイスミルクティーのセットだ。クッキーが美味しそうだったんでな」
メニュー写真を指さしてまでアピールするなんて、何だか可愛らしいね。
迷った挙句、抹茶メニューに興味引かれ、抹茶ラテセットにした。
値段もお手頃価格で、懐にも優しいのが決め手かな。
「洋は抹茶が好きなのか?」
「迷いそうな時は、いつも抹茶系を頼むことが多いかもです」
「ふふ……洋らしいな……あ、そうだ」
カバンをガサゴソ漁り、どこか照れ臭そうに紙袋を出してた。
「こ、これ。よ、洋に貰って欲しいんだ」
「え? いいんですか?」
「うん」
「ありがとうございます。中を見ても?」
こくこくと頷いてくれ中を見たら、雑貨屋のペアマグカップだった。
「そ、そのな……洋とお揃いの物が欲しかったんだ……」
新鮮なモジモジ姿と言葉で、気持ちは充分に伝わったよ。
マグカップは大切にするし、今度僕からプレゼントしようかな。
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