7章 昔馴染みのお姉さんと再会
第41話昔馴染みの現役女子大生
清々しい晴れの休日は、町ブラ日和だ。
気分良く最寄り駅に向かってたら、宮内のお婆さんとバッタリ。
軽い立ち話で、ご近所付き合いだ。
「洋坊や、1人でお出掛けかい?」
「はい。少し遠出してブラブラするだけですけどね」
「カッカッカ。何もしないよりマシさ」
「ですね。宮内のお婆さんは?」
「これを見て貰った方が早いか」
手提げバッグからチラシをくれた。
なになに、宮内道場体験会か。
開催日は本日午前10時。
って、30分切ってるじゃないか。
「じ、時間大丈夫なんですか? 準備とか色々ありそうですけど……」
「平気さ。けど、肝心の男手が足りなくてね……」
なるほど。
出歩いてたのも、ご近所さんから男手をスカウトしに来てたんだ。
気のせいかな、宮内のお婆さんの眼がキラリと光った気が。
気付けば手を掴まれてた。
「バイト代も弾ませて貰うよ」
「え、えっと……僕にできます?」
「参加者のサポートだから大丈夫さ」
タイムセールも然り、昔から可愛がってくれて、恩は返しきれないぐらいだ。
町ブラは今度でいいもんね。
「僕で良ければ。あと、バイト代はいいですから」
「何言ってんだい。素直に受け取るんだよ」
「は、はい」
世間話をしながら道場へと向かい、数分後には到着。
いつ見ても日本風情ある道場だね。
「どうしたんだい、早く入りなさい」
「あ、はい」
手入れされた大きな庭を横切り、広々とした玄関で靴を脱ぎ、裏方に案内される。
大きな建物内は新鮮で、町ブラに近い感覚でワクワクだ。
そんな浮かれている時、宮内のお婆さんが大きく息を吸い、大きな声を放った。
「
「は、ハーイ!」
遠くで返事と慌ただしい足音が聞こえる。
「返事だけは一丁前だね……」
「で、ですね。
「あぁ。単位も取り終わって、就職もこっちでするとか言って、実家暮らしする魂胆さ」
宇津姉は宮内のお婆さんのお孫さんで、現役女子大生だ。
町内会で子供達の世話焼きお姉さんで、僕らもお世話になった。
都内の大学に行ってたし、会うのは数年振りだね。
再会に少しわくわくだね。
「これから賑やかになりますね」
「何事にも限度はあるのさ。カッカッカ!」
嬉しそうに笑う宮内のお婆さんは、宇津姉が帰って来て、毎日笑顔が絶えないんだね。
控室に案内され、道着が来るまで待つ事になった。
数分後、慌ただしい足音が襖前で止まり、襖がスライドした。
「失礼しまーす。道着お持ち……」
「あ、宇津姉」
「洋ー! お久じゃん! 元気してた? 少し背伸びたんじゃない? 何でいるの? あ、男手って洋の事? そうなんだ! 今日はよろしくね! 道着のサイズ合うかな? 他のも持ってくるから! 一応一回着てみて! 大丈夫そうならそのままでよろしく!」
一方的な言葉ラッシュも健全で良かった。
数年振りの宇津姉は、雰囲気が大人っぽくて、ショートだった茶髪もミディアムヘアで似合ってたね。
道着のサイズは若干大きめだけど、サポートなら大丈夫だ。
見栄えは違和感ないけど、頼りない姿に見えるんだよね。
鍛えた方がいいのかな。
「お待たせー! おぉー! 似合ってるじゃん! サイズどうだった? 見た感じはいいね! あ、これ一つ上のサイズと、二つ上のサイズなんだけど、着てみなくても大丈夫そうだね! 道場でお祖母ちゃん待ってるから、行ってあげてね!」
答える暇もなく、宇津姉が去った。
今着ている道着しかないし、これで行くしかないや。
♢♢♢♢
襖の向こうから、結構な人の声が聞こえる。
緊張しないように、峰子さん直伝のツボ押しと、手のひらに人を書いて何度も飲み込もう。
よし、大丈夫だ。
いざ襖の先へ、行こう。
「失礼し」
言葉が止まる光景に、宮内のお婆さんの傍hw移動して、小声で声を掛けた。
「……あの、宮内のお婆さん」
「ん? なんだい」
「さ、参加者の皆さんって、全員女性なんですか?」
「女性に的を絞った体験会だからね」
チラシを確認したら普通書かれてるじゃないか。
詰み情報を見過ごすなんて、ミス詰みだよ。
サポートの立場上、参加者に接触する可能性が濃厚だし、細心の注意が必要だ。
「若干定員オーバだけど早速始めるよ。洋坊やも頼むよ」
「は、はい」
道着に着替えた宇津姉も、肩で息をして僕の隣に来た。
サポートが1人じゃなくて、心の底からホッとできるよ。
「宇津音も来たね。さぁ! 今回は体力作りも兼ねて、護身術を学んで貰うよ!」
元気のいい女性達の返事に、アウェーな空気がしみじみ染みてる。
間隔を開けて安全を確保し、体験会が本格的にスタートした。
「まずは動的ストレッチのラジオ体操で。体を温めるよ。宇津音、音楽」
「はいはーい!」
スピーカーと繋いだスマホを操作し、お馴染みの音楽が流れ出した。
「洋坊や、宇津音。早速サポートの時間だよ」
「えーっと、見本役ですか?」
「ノンノンノン! 違うよ洋! 正しいフォームで出来てるか見回って、手解きをするんだよ! 早速行ってみよう!」
道場の右半分を、宇津姉が勝手に担当し始めてる。
左半分は僕ってことだね。
改めて体験会の女性達を見ると、幅広い年齢層が参加しているね。
10代から30代が大多数を占めてるし、緊張感が高まってる。
約2時間、僕なりに頑張って動いて、宮内のお婆さんに恩返しだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます