第25話オラオラ系は純情乙女、大人女子は可愛いもの好き

 寝坊で1人参加が微妙だけど、一応これで人は揃ったみたい。

 軽く自己紹介を済ませたら、灯さんらが食い気味で質問ラッシュを繰り出してきた。


「レイブンって僕っ子か! スタイルとキャラ違ぇな! 面白ぇ奴だな!」

「生マロンちゃん……こんなにも愛らしいなんて……じゅるり……ひと舐めしてもいいかしら」

「2人って兄妹なんだね。普段は学生してる感じ? 部活とかは? スタイルって何で決めてる感じ?」


 答えようにも全く隙が見つからない。

 そんな困った中、呼び出された峰子さんがやって来た。


「ご注文をお伺いします」

「とりあえず生で!」

「ウィスキーをロックで」

「休肝日なのでコーラを」


 灯さんと道源寺さんは飲む気満々だけど、奈々さんの休肝日は聞き間違えかも。

 

「以上でよろしいですか?」

「あ、待って待って待って! 皆さん、未成年がいるからアルコール類は禁止です!」

「え、マジか」

「ワタシから酒を奪うなんてどうかしてるわ」

「あはは! 2人共残念でしたー!」

「早く決めないと怒りますよ~」


 岩下さんの温厚なお怒りに、3人は大人しくジュースやらを頼んでいた。

 やはり一番怒らせたら怖いのは、おっとり系な岩下さんなんだね。


 それにしても、オフ会が詰み場になるなんて思いもしなかった。

 

「お兄ちゃん? 顔色悪いよ? 膝枕する?」

「い、いや大丈夫。ありがとう」


 サバブラ話で気を紛らわして、詰み場を忘れるべきだ。

 それとも聞き役に徹するか、何度もトイレを挟むか。

 

 待て、そんな事しなくてもサバブラ話を盛り上げれば、楽しく詰み場を忘れられるじゃないか。

 会話導入として、サバブラのきっかけを聞くことにしよう。


「あ、あの……皆さんって何時からサバブラ始めました? ちなみに僕は初代からです」

「レイブンは根っからのサバブラーか! いかにも男子学生らしいな!」

「マロンちゃんマロンちゃん……はぁはぁ……じゅるり……」

「琴音の様子さっきからおかしくない?」


 変態な道源寺さんに反応してたら、流れが止まってしまうよ奈々さん。 


「なぁ、親睦深めんのに席替えでもすっか!」

「いいわね~♪」

「賛成です! 今くじ引きの準備しますね!」


 流れが完全に持ってかれた。

 これは非常にまずいぞ。


「マロンちゃんと隣……マロンちゃんと隣……」


 道源寺さんのクールな姿は、もう見る影もない、ただの空が大好きな変態だ。


 早見さんが即興割り箸くじで、割り振られた番号の席に座ることになった。

 その結果、席はこうなった。


「わぁ~♪ 洋さんの隣で嬉しいです~♪」

「ぼ、僕もです」

「お? レイブンは年上お姉さんが好みか? アタシなんかどうよ?」

「こう見えて灯ちゃんは、やんちゃもどきのピュアピュア女子なんだよ」

「ちょ奈々!? だ、誰が純情乙女だ! ち、違ぇからな?!」


 真っ赤な顔で否定されても、逆に肯定してるようにしか見えません。

 正面で涙目ながら、訴える灯さんの隣で奈々さんがケラケラ笑っていた。


「マロンちゃんが隣に……はぁはぁ……さ、触ってもいいかしら?」

「ひぃ!? お、お兄ちゃーん!」

「こ、琴音さん! 空ちゃんに変なことしないで下さいよ!」


 ごめん空。

 僕には止める事が出来そうもないんだ。

 だって、僕の隣には岩下さんが立ち塞がっているんだ。

 帰ったら家で好きなだけ甘えてもいいから、今は変態さんを嫌いにならないで欲しい。


 そんな席替え後、峰子さんが飲み物を持ってきてくれた。


「お待たせ致しました。ソフトドリンクのコーラ、オレンジジュース、レモン果汁100%ジュースになります」

「どもどもーやっぱレモンは100%じゃねぇとな! んっくんく……ひゅっぱい!」

「注文いいかしら~?」

「どうぞ」


 唯一の主婦である岩下さんの事だ。

 皆で気軽につまめる食べ物を頼んでくれる筈だ。


「ハンバーグドリア1つ、やみつきポテトサラダ1つ、ミートスパゲティ1つ、炭火焼チキン1つ、牛しぐれ丼1つで、とりあえずお願いするわ~♪」

「い、岩下さん? 量が多くないですか?」

「大丈夫ですよ~私が1人で頂きますよ~♪ 勿論、洋さんにもシェアしますからご心配なく~♪」


 食べても太らない体質なのか。

 栄養が全部グラマラスボディーにいくか。

 はたまた両刀なのか。

 どちらにせよ、食に対するポテンシャルが一般人を凌駕しているのは分かった。


「私は山盛りカリカリポテト2つ。レイブンちんは?」

「え。じゃあ、カルピソのおかわりを」

「アタシは奈々のポテトを貰うからいい」

「かしこまりました。お隣様もお決まりでしょうか」


 空達のテーブルにも注文を聞いてくれてるけど、見てはいけない光景が広がってた。


「ま、マロンちゃんは何が好きかしら……」

「も、モンブランでしゅ……」

「か、可愛ぃいっ! も、モンブランをありったけで……はぁはぁ……」

「モンブランは1つに訂正して下さい。えーっと、オニオンリング1つでお願いします」

「以上でよろしいでしょうか?」


 全員の了承を得た峰子さんは、爽やかな顔で仕事に戻って行った。

 道源寺さんが空に対する態度は、もはや狂気の沙汰だ。

 今にも空が泣きそうだけど、本当にどうすることもできないんだ。


「なぁジャガジャガ。レイブンと随分親し気だけどよ、リアルで知り合いなのか?」

「ご近所さんなんですよ~♪ ねぇ~洋さん?」

「え? あ、はい」

「へぇー世の中って狭いな。てか、サバブラを始めたきっかけだっけか?」


 自分で言っておいて、軽く忘れていた。

 灯さんのお陰で、流れを戻すチャンスが訪れたんだ。 

 ここで流れを逃さずに、詰みオフ会を最後まで乗り切るぞ。

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