第6話 忠誠
ベットと様々な機器が並ぶ真っ白な部屋で二人の男が話をしている。片方は白衣を着ていて、機器をカチャカチャといじっている。もう片方の男はベットの上でムスッとしている。そして白衣の男が口を開く。
「テセウス手術を開始します。詳細はこちらです。」
ベットの上の男は受け取った魔法記録装置を起動し、 詳細とやらを読み始める。
一 テセウス手術とは
まず、テセシウムコアを胸に埋め込み、強力な魔力照射で体と馴染ませます。そして、指定した体の部位を切除し、そこにテセウス手術対応の魔法兵装等をコアと接続させつつ、体の機能の代用が出来るよう接着します。
二 リスク
テセウス手術は人により許容可能な改造量が違います。事前調査である程度の許容量は判明しますが、必ず少しゆとりのある改造でテセウス手術を行わなってください。許容量を超えた場合、精神崩壊を起こし暴走及び死亡することがあります。
三 同意
以上の情報を知った上で、テセウス手術を行うか判断をお願いします。
「読み終わりましたか?」
白衣を着た男がベットに寝る別の男に尋ねる。
「終わりました。随分不安を煽る言い方ですね。」
ベットの上の男は、少し嫌味ったらしく返答する。
「そうですか。実際危険なのは事実です。では同意していただけみすか?」
「同意します。最善を尽くしてくださいね。」
「もちろんです。では手術を開始します。改めて改造内容を確認させていただきます。フラミンゴ社のジャンプレッグの軽量版を両足。ルナッポン社のランク2魔法結界が一つ。以上です。」
「改めて、手術を始めます。」
場所は変わり、イーツィ港にて
「タグセレクター起動。…タグを4つセット完了。有害炎魔法の構築を開始。合図に合わせ、行動を開始せよ。」
カトウが魔法通信で伝える。私も剣を構え、最初の攻撃対象を決める。準備が終わりしばらく待っていると。
キーン…ドン!!
奥の方にいるエンザート国軍兵士が爆発し、亡骸が燃え始める。妙に黄色い炎だ。
「各自作戦を開始せよ!」
魔法通信機がカトウの声で少し震える。足に力を込め、トンッと飛ぶ。そのまま狙いを付けていた兵士の背中を浅く斬り付ける。
「何も…の…」
バタッ…
力なく兵士が倒れる。傷口を包帯でギュッと縛り、さらに腕も縛ってテントに兵士を隠す。振り向かずそのまま先へ進む。すると、
「敵襲〜!敵襲〜!」
と、とても大きな声がイーツィ港に響き渡る。
今回私の作戦目標は、エンザート本国との連絡に使用している、大型魔力通信装置の破壊だ。……本当にこれでいいのか。私は流されるままで…やはりエンザート本国に行き、今のエルフーンの惨状を伝えるべきではないか?ゲリラに入って襲撃している場合なのか?大型魔力通信装置で、本国に追加戦力を申請し、パンドラをイーツィ港から追い出すべきなのでは?でも、そんなことをしたら私は反逆者として罪人になるのではないか…いいか。最後くらい、私は忠誠を示すべきなのだ。一人の軍人として、今までの反逆行為によって発生した罪は受け入れる。これで…これでいい。覚悟を決め、大型魔力通信装置に向かう。兵士は表の主戦場に行っており一人もいない。通信装置のデバイスを急いで起動し、信号発進準備を完了する。そして通信を始める。
「エンザート国軍通信管理局です。緊急信号とは…イーツィ港でなにか?」
「コードブラック。国家危機未遂だ。相手戦力はおよそ100。手練れだ…ハァハァ…緊急事態だ。ハァ…」
「コードブラック国家危機未遂ですって!本当に言ってます!?……わかりました。黒翼連隊を向かわせます。貴方は隠れていて下さい。では失礼します。」
やった…!通信が成功し、安堵する。もう死罪だって受け入れる。興奮で頭が回らない。息を切らせ、座り込む。
「やってくれたな。ゴミ野郎。エンザートに何を伝えた!」
ズガァン!
轟音と共に壁に叩きつけられる。カトウか…
「言え!死にたくないなら言え!」
首が絞められ、呼吸が出来ない。でも…言ってやりたくなって、言葉を絞り出す。
「野蛮人に…言うことなんかねぇよ…うっグゥ…」
「あぁ!?死にてぇのか!クソッ!何が来る。クソックソッ!ふざけやがって…アルツァーの野郎。味方くらい選べってんだよ。クソッ!」
カトウがダンダンと足を踏み鳴らしている。
すこし優越感に浸りつつ、呼吸を整える。
ジジジ…ガン!
金属の擦れる音と共に、カトウが何かにぶっ飛ばされる。来たか…
用語説明
有害炎魔法
対象を特殊な炎で燃やす魔法。煙には毒がある。
タグセレクター
最初の部分で出てきたテセウス手術で埋め込む目のパーツ。視界内の魔力反応にタグを設定する。タグは魔法の対象設定で便利。
コードブラック
緊急戦力が必要な危機
黒翼連隊
エンザート空軍の最高戦力。他国でも恐れられ、戦闘を避けられる程強い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます