第3話 エルフ?

 街を目指してもう1日が経とうとしている。日も暮れてきたので、果物が入っているという袋を開けてみた。赤くて丸い果物が5つ入っていた。

 爺さんをいきなり信用するのもどうかと思うが、狩りをする心得が無いので、一口食べてみた。シャキシャキとした食感で、少し甘い後味が残る普通の果実だった。

 そうして2つ果物を食べた後、森を散策しながら乾いた枝を数十本程度集めた後、円形に枝を組み、周辺の枯れ葉を少し多めに集めた。そして包帯に付いてる血を触媒に魔法を使い、火をつけた。火の粉を起こす程度なら少量の血程度でも行使できる。

 近くの木を背もたれにしばらく仮眠を取った。


 起きたらもう日が出ており、焚き火も消えていた。

 昨日地面に描いたマークで指しておいた方向へ向かう。エルフの街と聞いているが、本国より行ってならない場所なのでは?考えないようにしよう。

 獣も居ない森を歩いていると、思考がグルグルと回っていく。「こんな平和に歩くのなんて久しぶりだ」とか「あの爺さんはなんであんなに優しいのだろうか?裏は無いのか?」など疑問を浮かべて考える。繰り返していると、獣道が見えた。方向も一致している。

 そうして獣道に沿って歩いていくと、人影が見えた。

 すぐに木に隠れる。

 エルフか?と木陰から覗く。尖った耳だ。エルフ…にしては耳が大きいな。しかも顔の上の方が装飾らしきもので隠れている。あれは本当に見えてるのか?

 エルフなのかと疑っていたら、エルフ?がこっちに顔を向ける。まずい!急いで木陰に身を隠す。

 息を殺して隠れていると、

「どうされたのですか?」

 話しかけられた。返答…は。

「あぁ…この辺に街があると聞いて目指していたんです。」なんとか引きつる顔をもとに戻す

「旅人…?にしては軽装備なのでは?それに木陰に隠れてますし…はっ!」

 エルフ?が後ろに下がる。

「盗賊さん…ですか?あぁ…どうしましょうどうしましょう衛兵さんを呼ばなければ、あぁ盗賊さんはそこで待っててって盗賊さん待ちませんよね。あぁ…どうしましょう」

 クネクネと体を揺らしながら狼狽えている。

「盗賊ではありません。ほんとにただの旅人…です。ただエルフの街と聞いていたので少々貴方の姿に困惑したんです。なんと言えばいいか」

 エルフ?は恐らく女性。チラッと見えたが目の部分が見当たらない。そしてエルフとは思えない程大きな耳…。

「盗賊さん!」

「いえ旅人です。」

「旅人さん…私はエレサーと申します。エルフさんの街は無いですが無目族ノクロプスの街ならあります。私は朝の散歩をしていただけです。だから何も持ってません!」

「盗賊ではないので別に何もいりません。すいません何か不安にさせてしまったようで」

「あぁ…あと街ならこのまま進めば有りますよ。ただ最近エンザートさん?の軍が来てるらしいので街の門は開いてませんよ。」

 無いはずの汗が垂れた様な気がする。

「いろいろ教えてくれてありがとうございます。」

「いえいえ、物騒な世の中ですし、助け合いなんて。えへへ〜」

 タッタッタッと駆け足で彼女は去っていった。

「では」

 無目族ノクロプスか…聞いたこと無い種族に警戒されているのか…ちゃんと覚えておこう。それにしても街には入れないか…それはそうだな。

 さて…どうするか街は行かない事にしよう。警戒されてるのにあまり近づくべきは無い。

 う〜ん…エンザートに帰るか?船が無いな。

しかし他国に行くにしても身分証明が出来ないな…。さてどうするか…。

 中央キャンプ付近には近づかないとして、いっそ傭兵…身分証明出来ないな。

 エルフに投降するか…?いやそれも良いのか?しかし、しかし…う〜ん。

 出来そうなら投降しようか。じゃあ中央キャンプに行って見て考えるか。

 でも食料が無いな。中央キャンプも場所が分からんな。

 …振り出しに戻ったな。せめて武器が欲しいな。狩りすら出来ない。

 目を閉じ座り込んで考えを巡らせていると、目の前に剣がある。

「なっ!」

 体を後ろに引こうとするも抑えられる。

「誰…だ?」

「不審な人物と聞いて来てみれば、森の中で瞑想?確かに不審だな。あと私は無目族ノクロプスの衛兵カルクスだ。」

「不審なとは失礼な考え事をしていただけですよ」

「ふむ…しかしエレサーは盗賊さんが居ました〜!と語っていたぞ。まぁ…あいつは勘違いすることも多いだから不審な人物と仮定してみればほんとに怪しい人物がいる。まぁここで斬るのは変な話か…身分証明出来るものは?」

「今何も持っていなくて…」

「?不審人物じゃないか…身分がわからないなら不審でしか無いぞ。……しかし口でも言うだけ価値があるか…身分を言ってみろ。国と職業だ」

 これはどう答えれば…。

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