第30話

「だからって、それだけで疑うのはどうなんだ」


そうだ、今のところ明確な根拠はない。


宗士は蘭のことを煙たがっており、どうしても犯人にしたいようだった。


「絶対あいつに決まってる!」


「だから、何でそう決めつけるんだ!」


飛鳥が叫んだ時、蘭が部屋に入ってきた。


何も知らない蘭は、「どうしたんです?二人共」と目を瞬かせて言う。


蘭の姿を見た宗士は、掴みかからんばかりの勢いで「お前!俺の金盗っただろ!」と食ってかかろうとした。


何のことか分からない蘭は、「何なんだよいきなり!訳が分からないじゃないか!」と言い返す。


「俺の金がなくなったんだよ!お前が盗ったに決まってる!」


「何で俺が人の金盗るんだよ!人のせいにするな!」


「それなら、お前の荷物を確認してみろよ」


宗士にそう言われた蘭は、すぐに自分の荷物を確認し始めた。


すると荷物の中から、身に覚えのない財布が紛れていた。


明らかに、蘭のものではない。


知らないものが自分の荷物から出てきて、蘭は愕然とする。


「何だよ、これ……僕のじゃない……」


蘭が手にしたのは、藍色をした小さめの巾着袋だった。


「どれ!貸してみろ!」


宗士がひったくるようにして蘭から巾着袋を取り上げる。


しげしげと袋を眺め、宗士は「俺のじゃないか。やっぱりお前がやったんだろ?」と決めつけた。


「東堂さんに突き出してやる!」


宗士はそう言うと、蘭を引っ張り上げると、どこかへと連れていった。

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