第24話
和音は飛鳥が贈った文のことを言っているのだろう。
「え?うん……そうだけど?」
「俺も、お前が生きる意味になってるよ。これから先も、ずっとお前と一緒にいたい」
「それは、ここを出た後もってこと?」
飛鳥の問いに、和音は優しい表情で頷いた。
飛鳥も、そうなったら良いと思う。
共に年老いて、生涯を共にできればどんなに幸せだろう。
けれど、それが叶う日は来るのだろうかと思う自分もいる。
ここでの生活からいつ抜け出せるのか、分からないのだから。
ただ今は、和音といられる幸せを噛み締めていたい。
「お前が傍にいれば、それでいい」
和音はそう言うと、飛鳥をふわりと抱き寄せた。
「僕も、和音さんがいれば生きていけるよ」
叶うか分からない日を夢見て、飛鳥は和音の温もりを感じた。
それから一年が経ち、飛鳥の後輩が香煌楼に入ってきた。
蘭と名付けらた少年は、飛鳥より一つ年下で、活発な子だ。
飛鳥と同室になった彼は、物憂じしない性格のようで、飛鳥に何かとくっついてくる。
他にも先輩男娼はいるのに、なぜ自分にくっついてくるのか、飛鳥には謎だ。
男娼の生活区域には食堂があるのだが、朝食の際にも飛鳥の隣を陣取る。
そんな彼が可愛いと思う反面、身動きが取りにくいとも感じてしまう。
「お前は何で俺にくっついてくるんだ?」
迷惑さを装い冗談めかして言うと、蘭は「いいじゃないですか」と笑顔でくっついてくる。
本当は和音と食事がしたいのに、それは叶ったためしがない。
秘めた恋なのだから仕方ないが、飛鳥には辛いところだ。
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