第14話

そんなある日、飛鳥と和音が東堂に呼ばれた。


「何の御用でしょうか」


和音が問うと、東堂は険しい顔をする。


「お前たち、休日に客室に立ち入ってはいけないことを知っているな?」


東堂の問いに、和音はすぐに頷いた。


「はい、もちろんです」


「では、なぜお前たちは客室に入ったんだ?」


「一体、何のことでしょうか」


和音は東堂と対しながらも、飛鳥を手で自分の後ろに隠した。


和音が庇ってくれていることが分かる。


「祭りの日、客室の区域に向かうお前たちを見た者がいる」


飛鳥も和音も驚きに身を強張らせた。


「誰がそんなことを!?事実でなければどうするんです?」


「そんなことはどうでもいい。見たというんだから、事実なんだろう。違うか?」


狂気に満ちた目が、和音や飛鳥を射貫く。


この東堂という男は、こういう商売をしているせいか、どう猛さを孕んでいるのだ。


「問答無用だ。お前たちは三日間店に出ることを禁じる」


東堂の言う罰は、あまり過酷ではないような気がする。


しかし、それだけではなかった。


「お前たちはこっちに来い!」


東堂は、二人を引っ張りどこかへと連れていく。


建物の奥の奥、これまで飛鳥は足を踏み入れたことがない場所。


「まさか、ここって……」


和音が呟き、飛鳥は「何?」と小声で聞く。


「物置部屋だ。お仕置きで閉じ込める時にも使われるんだ」


和音の答えに、飛鳥は思わず「え!?」と声が大きくなってしまう。


「お前たち、何をごちゃごちゃとしゃべってるんだ」


東堂の低い声が響いた。


そして足を止めたところには、小部屋が二つ並んでいる。


「一人ずつここに入ってろ!三日後に出してやる」


和音と飛鳥はそれぞれに部屋に押し込められ、部屋には鍵がかけられた。


さすがに食事は与えられたが、飛鳥と和音は三日間部屋に閉じ込められたのである。


ほとんどの時間を何もない部屋で一人きりでいると、色々なことが飛鳥の頭の中を巡った。


家族たちはどうしているだろうか、政忠は自分に会いに来ただろうか、そして一番に思い浮かぶのは和音のこと。


こうなって、彼は後悔していないだろうか。


客室に飛鳥を連れ込んだのは和音だが、今は「連れ込まなければ良かった」と思っているかもしれない。


また、具合は悪くなっていないだろうか。


一人で何もない部屋に閉じ込められていたら、気が滅入るはず。


飛鳥がそうなのだから、和音の心身にも影響を及ぼしているのではないか。


そんなことばかりが思い浮かぶ。

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