第13話

政忠との行為に溺れる飛鳥。


和音との情事とは違うが、愛されている錯覚に陥りそうになるのだ。


『だめだよ…僕が愛しているのは、あの人なんだから… 』


仕事だから客と行為をするのは当然だが、飛鳥は涙が出そうになる。


政忠は頻繁に飛鳥のもとに通うようになり、飛鳥も政忠との情事に耽る。


政忠がやってくると、待ちわびたように飛鳥の体が疼く。


飛鳥は、自分の気持ちが政忠に移っているのではないかと思うほどだった。


ある日、飛鳥は政忠に聞いてみた。


「なぜ、僕に会いに来てくれるんですか?」


「実は、ある人を探していて、その人の面影を感じたから……」


いなくなった恋人に、飛鳥が似ているのだという。


だから、迷うことなく飛鳥を選んだらしい。


『誰かの身代わりか……』と少し飛鳥の熱は冷めたが、自分は所詮男娼なのだからと妙に納得するのだった。


自分は、客を悦ばせることのみだ。

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