第2話 恋

「ハッ!」


目を覚まし、そして携帯をそっと開いた。


「よかった。返信が来てた。」


そう。今日は出会い系で知り合った子と会う日だ。陰キャだからこういう事はもちろん初めて。ましてや異性いせいと2人きりで会うのなんて何年経つだろうか…。


俺は緊張きんちょうする手でスマホに向かい、丁寧ていねいに返信をする。


「よしっ…。準備準備っと。」


お昼近くになり集合場所である駅を目指す。

ここからバスで1時間。音楽をきながら返信をし、時間をつぶす。


「遠い。長い。でも楽しみだな。」


ボソッとつぶやきながら、りつける日差しを背に遠くの街をながめる。


1時間後、バスは止まり少し経ったあとまた進み始めた。


「暑い溶ける死んじゃう。」


ボソボソと呟きながら足を進める。


「集合場所はここか…?」


集合場所らしき所に着いた俺は、返信を進めた。

そして、不安で曇っていた視界しかいが晴れてやがて君は現れた。


栗毛くりげで、写真よりも少し長い髪の毛。暑いからか分からないけど胸元むなもとの空いたワンピース。

不安で緊張した少しこわばった顔。


「か、可愛いな。」


つい心の声がこぼれた。

そして君は笑顔でこう返す。


「え〜!うれしい!初めまして!真也くんだよね?よかった〜!会えて!」


初めて聞いた、耳をくすぐる明るい色彩しきさいの君の声。暑い夏の風が嘘のように涼しく、そして、照りつける暑い眼差まなざしも応援してくれるように。


「じゃあ行こっか!」


彼女は突然、俺の指をからめて手をつな強引ごういんに走り出した。


「ど、どこに!?」


自分の心には嘘をつけず、ただひたすらと彼女の後ろ姿を眺め…俺はこう思った。


一目惚ひとめぼれしたんだな。と


でも、出会い系で知り合った人なんてみんなこんな感じなんだろうな。


少しモヤモヤする心と嫉妬しっとが入り交じりながらも俺の夏は始まった。



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