楽園に降る雨

古 散太

楽園に降る雨

土砂降りの雨の中を歩いていた

ずぶ濡れの顔で空を見上げると

雨粒は無数の短く白い線となり

世界全体に広がって落ちてくる

これがわたしの世界のすべてだ

仮にこれ以上の世界があっても

あずかり知らぬとしか言えない

わたしの視界なんてそれぐらい

世界を知った顔なんてできない

わたしはまだなにも知らないし

すべてを知ることなどできない

知ったとして受け止められない

わたしの世界のその奥深くから

世の中を見ながら生きてくだけ


何か違っていると疑問を持って

それでも同じことを繰り返して

安心にくるまって眠る人たちを

土砂降りの雨の中から見つめる

安らかな寝顔の人たちがもしも

この世界の本質に気がついた時

毎日繰りかえしてる同じ思考を

変化させるだろうという期待に

胸を躍らせながらわたしもまた

安心にくるまって夢を見ている

物質世界がどうであったしても

わたしの世界はいつでも平穏で

わたしにとっていつだって楽園


土砂降りの雨の中で傘もささず

雨を見つめながら歩いていても

わたしはすでに楽園を歩いてる

なにひとつ不平不満などないし

すべてが平穏で満たされている

何もかもが自分自身のさじ加減

何を体験して何を見ているのか

何を感じてどう受け取ったのか

何もかもが自分次第のさじ加減

前を向いて歩き上を向いて笑う

昨日は過ぎてしまったあとだし

明日のことなど何もわからない

土砂降りの雨の中で傘もささず

落ちてくる短めの白い線だけを

わたしは満たされた心で見てる

いま頭上から落ちてくる雨粒を

なんの意味もなく見つめている

楽園に降り落ちるめぐみの雨を

ありのままの姿を見つめている

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楽園に降る雨 古 散太 @santafull

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